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Part3:高い価格競争力

見た目の品質で日本車を上回る
外観、内装にコストを重点配分

Hyundai Kiaグループは欧州車が採り入れた内装重視のトレンドにいち早く追従。コストをかけてドアトリムなど内装の高級化、装備の充実に力を注ぐ。一方、見た目では分からない部分は割り切った設計をしている。例えば、Dセグメント車のフロントサブフレーム。日本車で一般的な井桁構造は使わない。I型と呼ばれる小型のもので済ませ、メリハリを付けたコストの使い方をしている。

 Hyundai Kiaグループは見た目の品質を高めるため、外観ではエッジの利いたデザインや大型のヘッドランプを採用し、個性を引き出している。一方、内装にも気を配り、高級化、装備の充実に力を入れている。

 ある日系の大手内装部品メーカーは「内装に関しては脅威に感じている」とし、具体的なポイントとして「同価格帯のクルマにおける装備、仕様では大きく差が付いている」ことに危機感を抱いている。

 例えば、Hyundai Motor社のフラッグシップセダン「Equus」(図1)。全長は5160mmとトヨタ自動車の「レクサスLS」並みのサイズである。ところが、米国での価格は6万ドル(1ドル=100円換算で600万円)程度。同じ価格帯の日系メーカーの高級車はレクサスLSの1クラス下の「レクサスGS」や日産自動車の「Infiniti M」、ドイツBMW社の「5シリーズ」といったプレミアムセダンである。

 Equusのドアトリムを見ると、アームレストに本革素材を配置し、本木目の加飾パネルを使っている〔図2(a)〕。また、装備でもドイツDaimler社のMercedes-Benzブランドでおなじみの、シートの形状を模した位置調整スイッチを搭載している。

 一方、同価格帯の日本車は、図2(b)に示すレクサスGSのように、デザインはシンプルで、加飾パネルは竹製。シート位置調整スイッチは位置をメモリーする機能だけだ。

LEDの間接照明を多用

 最近のHyundai Kia車の特徴がLED(発光ダイオード)を使った間接照明の多用だ。もともとLEDの間接照明は欧州車が採り入れ始めたトレンド。これに韓国車はいち早く追随し、しかも同じように搭載するのではなく、使うスペースを一気に2倍くらいに増やしている。例えば、Kia Motors社が2012年に韓国で発売した高級車の「K9」では非常に多くのLEDを使っていると日本の部品メーカーの技術者は話す。

 その技術者が指摘するのは、「消費者が内装を見たら、車両価格が同じという前提だと、間違いなく韓国車のほうが優れている」という事実だ。もちろん、細かく見れば、各部品の合わせ部の仕上げには、まだ日本車に1日の長がある。しかし、それを指摘して「日本メーカーが勝っているというのは“負け犬の遠吠え”に過ぎない」と断じる。

 こうした仕様、装備の差はもともと、韓国車が内装を重視してコストを多めに配分していることや、内装部品のコストが日本に比べて安いという理由があると見られる。

以下、『日経Automotive Technology』2013年9月号に掲載
図1 Hyundai社「Equus」
図1 Hyundai社「Equus」
排気量5.0LのV型8気筒エンジンに8速自動変速機を組み合わせる最高級車。全長5160mmと「レクサスLS」並みのサイズながら、米国での価格は6万ドルと「レクサスGS」並み。
図2 「Equus」と「レクサスGS」のドアトリム
(a)Equusは、本木目の加飾パネル、シートの形状を模した位置調整スイッチ、本革のアームレストを使う。心材はABS、PPが主体で全体の質量は5.6kg。(b)レクサスGSは、シンプルな作り。心材はPPや天然繊維の軽い素材で、全体の質量は3.4kgと軽い。
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