着々と日系自動車メーカーとの取引を増やしている韓国の自動車部品メーカー。ウォン高でコスト競争力は変わるのか。ソウルおよびソウル南方の牙山(アサン)、南部の自動車産業集積地帯の大邱(テグ)、慶州(キョンジュ)の自動車部品メーカーを訪れ、動向を探った。
韓国自動車部品メーカーの海外自動車メーカーとの取引が拡大している。その最大の理由は、韓国HyundaiMotor社の購買戦略の変化だ。近年、同社は北米やロシア、インドなどで現地生産を加速しており、現地メーカーとの取引を増やしている。Hyundai社の調達が自由化に向かうことで、韓国部品メーカーも同社に頼らず自ら取引を拡大する必要に迫られている。
この追い風になっているのがFTA(自由貿易協定)の締結だ。韓国は2011年7月にEU(欧州連合)と、また同年11月に米国とFTAを結び、韓国部品メーカーがドイツVolkswagen社や米GM社といった欧米大手メーカーと取引しやすくなっている。
最近顕著なのが日系自動車メーカーとの取引拡大だ。大韓貿易投資振興公社(KOTRA)によると、2012年の韓国自動車部品の対日輸出額は前年比12.7%増の7億8100万ドル(1ドル=100円換算で781億円)となった。これは2009年以降3年連続のプラス。
「東日本大震災後に日系メーカーが調達先のリスク分散を進めた」(KOTRA関係者)ことと、コストを下げられることが取引拡大の要因だ。韓国部品は一般に日本製部品に比べて2~3割安いとされており、日系部品メーカー製からの置き替えが始まっている。
しかし、昨年後半から円安ウォン高が進み、日系メーカーにとって韓国部品の価格は実質的に上昇している。こうした状況でも、韓国部品の日本進出は今後もさらに拡大するのか。今回は、韓国の大手および中堅の部品メーカーを訪問し、各社事業の現状と今後の方針について詳しく聞いた(図1)。
2社が日産に部品を供給
最初に紹介するDonghee社とYoungshinPrecision社は日産自動車が韓国部品の調達を増やした商用車「NV350キャラバン」に部品を供給している。従来部品との価格差は明らかにしていないが、コストの低減が採用の理由だ。
Donghee社は、燃料タンク、サスペンションモジュール、サンルーフ、ボディ部品などを手がける大手部品メーカー。1972年の創立以来Hyundai社の成長とともに売上を拡大してきた(図2)。2012年の総売上高は前年比11%増の約20億ドル(約2000億円)と2005年の約2.5倍。国内で68%を生産し、韓国内に牙山、蔚山(ウルサン)など9カ所の工場と2カ所の研究開発拠点がある。従業員数は約5000人。
