急激に注目を集めるようになった3Dプリンタ。2013年6月末に開催された「設計・製造ソリューション展(DMS展)」には、その実力を知ろうと多くの人が詰めかけた。「魅せた!編」ではDMS展を中心に、3Dプリンタのトレンドを解説する。
3Dプリンタの価格は、個人で購入できるレベルにまで下がった。今後、技術者が自分自身で操作し、立体モデルを造形する機会も増えてくるだろう。実際にどのような操作が必要なのか─―。「使った!編」では、最新機種による造形の体験記を報告する。(中山 力)
魅せた!編:「設計・製造ソリューション展」レポート
樹脂、紙、金属など、造形材料が多様化
「2012年に比べて、来場者は2倍に増えた」─―。2013年6月19~21日に開催された「第24回 設計・製造ソリューション展(DMS展)」の3Dプリンタ・ゾーンに出展した企業の担当者の多くは口をそろえる。テレビ局がこぞって取り上げたことも手伝い、通路には人があふれ、展示物を見るのにも一苦労するほど。個人向けを中心に裾野を広げつつある低価格機や、材料や機能の向上が進む高機能機を含めて、発売されたばかりの新製品が幾つも登場し、各社が意欲的な展示を披露した。造形材料としては樹脂だけでなく、紙を使う3Dプリンタも登場し、金属部品や金型、砂型を造形できる3Dプリンタなどが目を引いた。
低価格3Dプリンタに人だかり
今回、来場者の注目を最も集めたのは、10万円から50万円程度と、100万円を切る価格帯の3Dプリンタである。これらは、PLA(ポリ乳酸)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの熱可塑性樹脂の線材を、ヒータ内蔵の可動ヘッドから吐出する造形方法を採用する。
その代表格が、米3D Systems社が2013年6月に発売した低価格機「Cube」「CubeX」である(図1、「使った!編」参照)。価格は、最大造形寸法が140×140×140mmと小さいCube(ヘッド1個)は16万円、最大造形寸法がCubeよりも各辺で100mmほど大きく、ヘッド搭載数を1~3個で選べるCubeXが約40万~50万円。いずれも、好調な売れ行きをみせているという。
同社の日本法人であるスリーディー・システムズ・ジャパン(本社東京)は今回、複数の代理店と共同で大きなブースを構えた*1。複数台のCubeとCubeX、およびこれらによる造形物を展示。実際に造形動作を見せたこともあり、大きな人だかりができていた。
低価格3Dプリンタの大手メーカーである米MakerBot社の「Replicator2」と「同2X」を展示したのが、同社の正規代理店である日本バイナリー(本社東京)である(図2)。MakerBot社製3Dプリンタの累計販売台数は2万2000台を超えており、Replicator2の販売台数は直近9カ月で1万1000台に達するという。ちょうどDMS展の会期中の2013年6月19日、米国とイスラエルに本社を構えるStratasys社が、MakerBot社を買収することを発表した*2。
〔以下、日経ものづくり2013年8月号に掲載〕


*1 具体的には、イグアス、SOLIZE Products、東朋テクノロジー、武藤工業と共同出展した。
*2 MakerBot社はStratasys社の子会社となる。合併は2013年第3四半期に完了する予定だ。MakerBot社の売上高が2012年度は1570万米ドル、2013年度は第1四半期だけで1150万米ドルに達している。