
グローバル製造業コンサルティング部 上級コンサルタント 張翼氏
世界最大の自動車市場となった中国で2012年秋、大規模な反日デモが起きた。日本車や日系販売店などが破壊された光景は、まだ記憶に新しい。デモ後、日系メーカーは軒並みシェアを落とし、ピークだった2008年の3分の2程度の水準となった。それから約1年がたったいま、依然として苦戦が続いている。
反日デモによる日本車の買い控えは、もちろん中国市場における日系メーカー各社の業績悪化の大きな理由ではあるが、そこにはより本質的な問題が潜んでいたと筆者は考えている。そもそも今回のデモが起きる数年前から日本車の販売不振は顕在化し始めており、市場シェアも年々低下していた。
それまで、沿岸地域で先進国市場とほぼ同じ仕様のグローバルカーを投入し、順調にシェアを伸ばしてきた日系カーメーカーは、商品の開発や部品調達の現地化に力を注いでこなかった。このため、欧米の競合メーカーに対して商品力、コスト競争力の両方が下がっていた。一方で、欧米系メーカーは中国内陸部の市場の立ち上がりに合わせて、2008年ごろから現地のニーズをうまく取り込んだ低価格の「中国専用車」をタイムリーに投入してきた。