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2012年11月以降、1万カ所以上の点検漏れが発覚した高速増殖炉(FRB)原型炉「もんじゅ」。これを契機に日本原子力研究開発機構(JAEA)によるもんじゅの管理・運営体制の改革が検討されている。改革によってJAEAは本当に再生できるのか、もんじゅは再び稼働するに値するのか。これまでの経緯を振り返り、桜井淳氏が改革案を検証する。

 FRBを要とする日本の核燃料サイクル構想は、もんじゅの1995年12月の液体ナトリウム(Na)の漏洩、2010年8月の燃料交換装置の落下という、2つの大きな事故とその対応の不手際から、技術的信頼を失った。同時に、JAEAという組織に対する信頼も崩れ落ちた。

 FRBは、液体Naを扱う技術的な難しさに加えて、核兵器に転用可能なプルトニウムの拡散防止に関係するという政治的な困難さを抱え、ほとんどの欧米先進国は開発に見切りをつけている*1。これに対し、日本は依然として核燃料サイクル構想の旗を降ろしていない。だが、液体Na漏洩事故から18年近くたった今なお、もんじゅは再稼働できず、冒頭のような状況で開発は迷走状態にある。

 そんな中で発覚した膨大な数の機器点検漏れである。これを機に文部科学省(文科省)は、抜本的改革を図るべく「原子力機構改革本部」(改革本部)を設置。数回の会合を経て、2013年8月には組織改革の方針を掲げた「中間とりまとめ」が提出された1)。その内容を一言で言えば、もんじゅの運転を最優先した組織と人員配置、品質管理を念頭においたJAEAの解体的再編である*2

民間の力を活用

 中間とりまとめが指摘する現状の課題と改革案の内容をみてみよう。

 改革本部は、図1のような改革の方向性を掲げている1、2)。それを踏まえて、JAEAの業務の基本的な考え方として、[1]JAEAで着実に実施すべきものであること、[2]基礎基盤研究とプロジェクト研究開発の連携・融合・統合効果の発揮されるものであること、[3]放射性廃棄物などの確実な処理処分を実施すること、[4]原子力基礎基盤の確保・技術継承と人材育成および核燃料サイクルの確立に必要な業務であること、[5]経営陣が責任を持ってガバナンスを効かすこと、を挙げた。つまり、[1]~[5]が新生JAEAのミッションである。

〔以下,日経ものづくり2013年10月号に掲載〕

図1●改革の方向性
士気の向上、外部の目や民間企業のノウハウ利用などを掲げている。中間とりまとめの資料を基に本誌が作成。写真:日本原子力研究開発機構
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*1 開発した原型炉を維持しているのは日本とロシアだけで、将来に向けて技術開発を進めているのも中国やインドに限られている。米国は1983年に原型炉「クリンチリバー」の計画を、ドイツは1991年に原型炉「SNR-300」の計画を中止。英国は1994年に原型炉「PFR」を、フランスは1998年に実証炉「スーパーフェニックス」を閉鎖している。

*2 本稿ではエンジニアの視点とこれまでの経緯からもんじゅ開発プロジェクト完遂の是非について考える。

1)原子力機構改革本部,『日本原子力研究開発機構の改革の基本方針(概要)』http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/08/14/1338627_1_2.pdf http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/08/14/1338627_2_1.pdf

2)原子力機構改革本部,『日本原子力研究開発機構の改革の基本的方向─安全を最優先とした組織への変革を目指して─』http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2013/08/14/1338627_3_1.pdf