「売れる製品」はこうして生む
第1回ではTRIZのような発想法が有効である理由、第2回ではTRIZとは何か、第3、4回では「TRIZの日本式活用法」の具体的な内容、第5回では手法を現場に浸透させる際のポイントを取り上げた。最終回となる今回は、ここ3~4年で多くの企業が導入を進めている、さらに進化したTRIZの日本式活用法を紹介して本連載を締めくくりたい。
日本式活用法の盲点
第1回でも記述した通り、TRIZは1996年に日本に初上陸した後、大手電機メーカーや自動車メーカーをはじめ、数百を超える企業がこぞって導入して一大ブームを巻き起こした。ところがその2~3年後、「難しくて使えない」「思ったような成果が出ない」と本格導入を断念する企業が続出した。その理由は幾つかあるが、膨大な特許の分析結果が収録されたソフトウエアが出回り、それさえあればTRIZを使いこなせるとの誤解があったことが一番大きいと思う。この難解さを克服し、「TRIZを誰でも使いこなせる道具」にするために生まれたのが日本式活用法だ。
ここでもう一度おさらいをしておくと、日本式活用法では、TRIZを実施する「前」と「後」に独自の工程を加える。前工程では、「機能-属性分析」と「原因-結果分析」を駆使して自身が抱える技術課題の本質的な原因(根本原因)を突き止める。その根本原因を解決するアイデアは、TRIZで発散させることで大量に導き出す。そして、後工程で「Pughのコンセプト選択法*1」を応用しながら、TRIZで導いた大量のアイデアを整理/分類し、取捨選択したり複数のアイデアを組み合わせたりして幾つかの問題解決/製品コンセプトに収束させていくのだ。
こうした日本式活用法を取り入れることで、多くの企業がTRIZを使えるようにはなった。しかし、企業が新製品を企画して開発し、製品を市場に届けるまでの一連のフロー全体から見ると、TRIZの日本式活用法だけではまだ網羅できていない部分が残されていた。それが「どんな製品(問題)を開発(解決)したらいいか」と、「製品の品質をどうやって確保すればいいか」の2点である(図1)
TRIZは、何らかの技術課題があった時に、それを解決するためのアイデアを導くのには向く。しかし、そのTRIZで解決すべき課題を考え出すのは、TRIZを活用する技術者本人だ。併せて、TRIZで画期的な課題解決アイデアを着想できたとしても、それを具体的な製品の品質に落とし込む方法までは、TRIZでは知ることができない。やはりこれを考えるのも、技術者本人なのである。
TRIZが網羅できないこれらの領域においても、技術者がより効率的に目的を達成できるようにと考案されたのが、「体系的技法の連携活用」である。複数の体系的技法を組み合わせるやり方は、発想としては従来からあったが、ここ3~4年で多くの企業が本格導入を始めた。いわば、TRIZの日本式活用法の進化系だといえる。
〔以下、日経ものづくり2013年10月号に掲載〕

*1 Pughのコンセプト選択法 米Massachusetts Institute of Technology(MIT)教授のStuart Pugh氏が提唱した。コンセプトの強みと弱みをマトリクスで相対評価しながら、さらに強いコンセプトを作り上げる手法。
アイデア 代表取締役社長
アイデア TRIZプログラム担当ディレクター