事例
【三菱電機】
条件:設計思想の統一
工夫:最善の手順を全員で議論
鉄道車両空調装置を手掛ける三菱電機の長崎製作所は、現在開発中の製品でモジュール化に取り組んでいる。この製品は、海外市場で躍進するための“切り札”という位置付け。設計はほぼ完了しており、試験などを経て顧客の車両メーカーに納品する予定だ。
鉄道車両空調装置とは、文字通り鉄道車両のためのエアコンである(図1)。大きく室内機と室外機に分かれており、室内機の主要モジュールとしては送風機(ファン)や熱交換器、風量調節などのダンパ、室外機の主要モジュールは同じく送風機や熱交換器、圧縮機などがある。これらのモジュールから成る空調装置は、車両の上部や下部に設置され、車両内に調和空気を送り込む(図2)。
海外で求められる短納期
鉄道車両の中で空調装置をどのように搭載するかということは、一般に車両メーカーが決める。空調装置メーカーである三菱電機には、車両メーカーから要求仕様とともに空調装置を設置できる空間が提示される。三菱電機は、それらを満たすように空調装置を開発することになる。
従来、空調装置は搭載する車両ごとに形状や仕様が異なる個別設計の製品だった。同じ車両メーカーでも車両の種類によって容積や気密性、1両に設置する空調装置の数、ダクトの通し方などさまざまな仕様が異なる。別の車両メーカーとなれば、なおさらだ。従って、モジュールそのものや、それらを組み合わせるインタフェースについては、都度設計する必要があった。事前に標準モジュールがそろっていて、それらを単純に組み合わせるような設計にはなっていなかった。
現在、車両や車両メーカーの枠を超えて空調装置を標準化する動きはあまり見られない。空調装置の形状や仕様を決定するのが車両メーカーである以上、空調装置メーカーの三菱電機から標準化を提案するのは現実的ではないという。それでも同社が自社製品を対象とするモジュール化に踏み切ったのは、これから海外市場に打って出る上でモジュール化による開発の効率化が不可欠と考えたからだ。
現在、同社は国内市場において約70%と圧倒的なシェアを占めている。一方、海外市場では15%にすぎない。今後の成長に向けて海外市場の攻略は避けて通れない。
〔以下、日経ものづくり2013年11月号に掲載〕