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【セムコ】

条件:競争力のある共通基盤の確立
工夫:全機種向けに小型化技術を開発

 樹脂成形加工機の周辺装置を手掛けるセムコ(本社広島市)。その同社が新たに開発した混合機「FB1」シリーズに注文が殺到しているという(図1)。同一性能で比較した場合に、従来製品よりも圧倒的に小型である点が評価されたのだ。

 混合機は、樹脂成形加工の前に複数種類の樹脂ペレットを混合した上で、樹脂成形加工機に供給するための装置である。単に混ぜるだけではなく、各樹脂ペレットの質量を正確に計量しなければならない。しかも、計量から混合、供給まで一連の流れを樹脂成形加工のサイクルタイムの中で収める必要がある。

 その混合機の性能は、主に処理能力(kg/時)という指標で決まる。処理能力は、1時間当たりに計量/混合/供給できる樹脂の質量を示したものだ。ここで、図1をあらためて見てほしい。左側は新製品、右側は従来製品で、どちらもほとんど同じ大きさである。しかし、それぞれの処理能力は新製品が500kg/時、従来製品が200kg/時と、両者には2.5倍の差が付いている。言い換えれば、同じ処理能力の混合機をはるかに小さく造れるようになったということだ。当然ながら、新製品は同等の性能を持つ競合他社製品と比較しても「最も小さい」(同社)。小型化によってコストも低減できるので、価格競争力でも優位に立てる。

 これほどまでに小型化できた理由そのものは「門外不出」(FB1シリーズの開発を主導した同社システム管理グループ部長の森田宏氏)だが、より大きな成果として同氏が挙げるのは、小型化とモジュール化を並行して進められたことである。つまり、この小型化技術は特定の製品だけに向けて造り込んだものではなく、あらゆる処理能力の製品に適用できるのだ。実際、処理能力が1000kg/時の製品も発売のメドが付いた。


〔以下、日経ものづくり2013年11月号に掲載〕

図1●新製品(左)と従来製品(右)の比較
図1●新製品(左)と従来製品(右)の比較
ほぼ同じ大きさに見えるが、主要性能である処理能力は新製品が500kg/時、従来製品が200kg/時と全く異なる。新製品では、性能当たりで圧倒的な小型化を実現した。

【エスペック】

条件:インタフェースの整合性の維持
工夫:ルール無視の変更は許さない

 機器・部品の耐久性試験や寿命試験といった各種試験の実施環境をつくり出す環境試験器。エスペックはこの分野で、国内で約60%、海外で約30%といずれもトップシェアを占める。その主力製品である恒温恒湿器「プラチナスJ」シリーズは、モジュール化の考え方を適用したものだ(図1)1)

 なぜ、同社がモジュール化に挑んだのか。その理由は、恒温恒湿器のビジネスモデルにある。

 恒温恒湿器の顧客はまず、自社の量産ラインで必要としている試験の実施環境がどのようなものかを調べ、その妥当性を検証するために、広範な機能/性能を備える「汎用装置」を数台導入する(表)。プラチナスJシリーズも、汎用装置に位置付けられる。そして、汎用装置で必要な実施環境が分かったら、量産ラインに向けて最低限の機能/性能に絞り込んだ「専用装置」を数十台単位で導入する。

 専用装置は、その名の通り、顧客の要求に応じて都度設計するものである。量産ラインに設置するので、要らない機能/性能は全て省いた上で、極限まで小型化するなど、手間が掛かる。しかし、それによる付加価値も高く、ビジネスとしての見返りは大きいと、エスペック開発本部製品開発部部長の梶本薫氏は語る。

 一方、汎用装置は、前述の通り実施環境を調べたり検証したりするためのものなので、広範な機能/性能が求められる。一般に1つの案件で売れる台数は少なく、顧客の要求ごとに都度設計していては効率が低い。汎用装置の開発はなるべく効率化し、限られた技術者のリソースは専用装置に投入したい。

 とはいえ、「汎用装置の実績によって顧客の信頼を獲得しているからこそ、数十台単位の専用装置を受注できる」(同社モノづくり改革本部技術改革部部長の渡辺正和氏)という側面もある。従って、汎用装置では都度設計することなく多くの顧客の要求に応えなければならない。モジュール化への挑戦は必然だった。


〔以下、日経ものづくり2013年11月号に掲載〕

図1●恒温恒湿器
図1●恒温恒湿器
環境試験機の主力である恒温恒湿機「プラチナスJ」シリーズ。多様な製品を短納期で供給するために、モジュール化に取り組んだ。
表●汎用装置と専用装置の比較
汎用装置をモジュール化の対象とした。専用装置は、写真ではなくイメージ。
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1)高野ほか,「日本の装置はなぜ強いのか」,『日経ものづくり』,2013年4月号,pp.40-61.