評価の特徴
EPEATの特徴として真っ先に挙げられるのは、製品のライフサイクル全体における環境影響を評価することだ(図1)。環境に関する既存の法令や規制は、ライフサイクルの特定の段階に焦点を合わせたものが多い。例えば、製品の開発段階における有害物質の含有を制限した欧州のRoHS指令やREACH指令、製品の使用段階における消費電力の上限値を定めた規制などである。一方、EPEATでは、こうした既存の法令や規制を含む50~60の要求事項によってライフサイクル全体の環境影響を評価する。
要求事項の区分にも特徴がある。要求事項は、「必須要求事項」と「オプション要求事項」の2つがあり、EPEAT適合を果たすには全ての必須要求事項を満たさなければならないが、オプション要求事項を満たす必要はない。ただし、オプション要求事項の適合数が全体の50%未満だと「ブロンズ」、50%以上75%未満だと「シルバー」、75%以上だと「ゴールド」という具合に、3段階でランク付けされる。
メーカーは、どのランクでもEPEAT適合を宣言できる。だが、実際のビジネスでは購入側がランクを指定していたり、上位ランクほど入札時の加点対象にしていたりするので、ランクが高ければ高いほど有利である。必然的にメーカーはゴールド適合を目指すため、長期にわたってメーカーに環境への取り組みを促す仕組みになっている。
さらに、要求事項には「製品単体」および「企業全体」という区分もある(表)。前者は製品単体の環境性能を評価するのに対し、後者は企業全体の環境への取り組みを評価する。具体的には、製品の回収・リサイクル体制の構築、環境マネジメント・システムの認証、企業活動による環境影響データ(大気/水/廃棄物/化学物質)の公開などである。従って、EPEAT適合を果たすには、製品を開発・設計する部門だけではなく、環境活動を推進する部門の関与も不可欠であり、組織横断的な取り組みが求められる。
要求事項の多くは世界共通だが、国・地域によって異なる場合もある。例えば、製品の回収・リサイクル・廃棄は、国・地域ごとの法令などに沿って実施しなければならない。日本に家電リサイクル法や資源有効利用促進法といった法令があるように、米国にも別の法令が存在しているからだ。
つまり、メーカーが製品の回収・リサイクル体制を構築しているかどうかは一律に評価できず、それぞれの国・地域の法令などに基づいて判断されることになる。従って、EPEATでは同一製品であっても国・地域ごとに評価が実施されている。その過程で、ある製品が米国ではゴールドに適合していても、別の国ではシルバーにとどまるというような事態も起こり得る。
〔以下、日経ものづくり2013年11月号に掲載〕
UL Japan 環境部門 事業開発マネージャー