水素貯蔵 バイオコーク技研
多孔質化とタブレット化で
経済的かつ安全に水素を運搬
燃料電池と並んで、もう1つ新たに期待されている用途がある。水素貯蔵だ。これは、Mg合金の、水素と結び着く、水素吸蔵合金としての機能を利用するもの。これまでもその性能を高めるべく希土類を添加するなどさまざまな研究がされて来たが、水素の放出が遅いという難点があった。この問題を解決する技術を開発し、事業化しようとしているのが、バイオコーク技研(本社東京)だ。
吸蔵量の2倍の水素を発生
Mgは、水素と結び着いて水素化Mg(MgH2)となる。MgH2は水を加えると、加水分解反応〔MgH2+2H2O→Mg(OH)2+2H2〕を起こして水素を放出する。このときMgと結合していた水素だけではなく、加えた水からも水素が生じるため、MgH2の水素量の2倍の水素が発生する。MgH2自体の水素貯蔵率は7.6質量%だが、実質的に15.2質量%の水素が得られるのだ。これは、単位体積当たりで比較すると、84.5MPaの高圧ボンベに貯蔵したのと同等の貯蔵量となる。
しかも、水と接触しなければ安定した物質なので、バルク材としてハンドリングしやすく、水素を経済的かつ安全に輸送・備蓄する手段の1つになり得る。水素燃料電池と組み合わせた場合、水さえあれば発電する燃料電池ができるのだ。
こうした利点を生かしつつMgH2を使った事業を本格化させるため、同社は2013年9 月、エコツー(本社名古屋市)、有限責任事業組合のZERO ONE ZEROと共同で、「マグ水素事業」の立ち上げを発表した*1。
〔以下、日経ものづくり2013年12月号に掲載〕
*1 今後、他企業との提携や協業により、水素燃料電池などと組み合わせた新たな事業展開も探っていく。