セルとラインの融合でオーダー生産を実現
本コラムの最終回を飾るのは、システムキッチンやユニットバスなどを手掛ける住居内設備メーカーのトクラス(本社浜松市)の100%子会社で、製造機能を担うトクラスプロダクツ(同)である*1。「聞いたことのない社名だな」と思う読者も多いかもしれない。実は両社は2013年10月1日に社名が変わったばかり(図1)。それ以前は、トクラスはヤマハリビングテック、トクラスプロダクツはヤマハリビングプロダクツという社名だった。MBO(マネジメントバイアウト=経営陣参加による買収)により、ヤマハおよび投資ファンドから独立したのである。
新しい社名ロゴが美しいエントランスを通って案内された会議室で筆者を迎えてくれたのは、トクラス代表取締役会長の八幡泰司氏、同社取締役執行役員ものづくり統括部長の澤井隆治氏、同社ものづくり統括部生産企画部部長の岸健太郎氏、トクラスプロダクツ取締役化成品生産部長の荒川昇之氏、同社ユニット生産部長の齋藤孝弘氏の5人。ここで生産工程の概要の説明を受け、早速現場に足を運んだ。今回の工場探訪はキッチンカウンターの製造工程。案内役は荒川氏と齋藤氏の2人だ(図2)
木材加工とセル生産
工場の敷地は約400×300mと広大だ。システムキッチンの製造工程は大きく2つに分かれている。引き出しや扉、筐体などの「キャビネット」部分と、シンクや調理台などの「カウンター」部分だ。これらを別々に製造し、顧客の元(新築の住宅やリフォーム現場など)で2つを一緒にして据え付けるのだ。まずはキャビネットの製造工程を見て行こう(図3)。
工場建屋の1階に入ると、木材が香り、そして木を削る音が聞こえてきた。まさに浜松の伝統技術である木材加工を継承する現場だ。
〔以下、日経ものづくり2013年12月号に掲載〕


*1 新社名の「トクラス」は、前身のヤマハリビングテック時代からの製品ブランド名で、キャッチコピーの「お客様のまいにちと・ 暮らす(トクラス)」に由来する。
関ものづくり研究所 代表