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「関伸一の強い工場探訪記」は今号で終了となります。2014年1月号からは、製造業の競争力の源泉となる「現場力」についての講座を始めます。現場力とは何か、どうすれば高められるかを、「5S」や「安全」、「品質」、「標準作業」といった視点から解説します。

セルとラインの融合でオーダー生産を実現

 本コラムの最終回を飾るのは、システムキッチンやユニットバスなどを手掛ける住居内設備メーカーのトクラス(本社浜松市)の100%子会社で、製造機能を担うトクラスプロダクツ(同)である*1。「聞いたことのない社名だな」と思う読者も多いかもしれない。実は両社は2013年10月1日に社名が変わったばかり(図1)。それ以前は、トクラスはヤマハリビングテック、トクラスプロダクツはヤマハリビングプロダクツという社名だった。MBO(マネジメントバイアウト=経営陣参加による買収)により、ヤマハおよび投資ファンドから独立したのである。

 新しい社名ロゴが美しいエントランスを通って案内された会議室で筆者を迎えてくれたのは、トクラス代表取締役会長の八幡泰司氏、同社取締役執行役員ものづくり統括部長の澤井隆治氏、同社ものづくり統括部生産企画部部長の岸健太郎氏、トクラスプロダクツ取締役化成品生産部長の荒川昇之氏、同社ユニット生産部長の齋藤孝弘氏の5人。ここで生産工程の概要の説明を受け、早速現場に足を運んだ。今回の工場探訪はキッチンカウンターの製造工程。案内役は荒川氏と齋藤氏の2人だ(図2)

木材加工とセル生産

 工場の敷地は約400×300mと広大だ。システムキッチンの製造工程は大きく2つに分かれている。引き出しや扉、筐体などの「キャビネット」部分と、シンクや調理台などの「カウンター」部分だ。これらを別々に製造し、顧客の元(新築の住宅やリフォーム現場など)で2つを一緒にして据え付けるのだ。まずはキャビネットの製造工程を見て行こう(図3)。

 工場建屋の1階に入ると、木材が香り、そして木を削る音が聞こえてきた。まさに浜松の伝統技術である木材加工を継承する現場だ。

 
〔以下、日経ものづくり2013年12月号に掲載〕

図1●ヤマハリビングテックからトクラスに社名が変わった
図2●左がトクラスプロダクツ取締役化成品生産部長の荒川昇之氏、右が同ユニット生産部長の齋藤孝弘氏
図3●キャビネットの生産工程
[画像のクリックで拡大表示]

*1 新社名の「トクラス」は、前身のヤマハリビングテック時代からの製品ブランド名で、キャッチコピーの「お客様のまいにちと・ 暮らす(トクラス)」に由来する。

関 伸一(せき・しんいち)
関ものづくり研究所 代表
1981年芝浦工業大学工学部機械工学科卒。テイ・エス テックを経てローランド ディー.ジー.に入社。2000年に完成させた、ITを取り入れて効率化した1人完結セル生産である「デジタル屋台生産」が日本の製造業で注目される。2008年からはミスミグループの駿河精機本社工場長、生産改革室長として生産現場の改革に従事。28年間の製造業勤務を経て、3年前に「関ものづくり研究所」を設立。静岡県浜松市在住の55才。