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「まさかのトラブル 要チェック!中国メーカーの品質」は、最近増えている「Made in China」製品の品質トラブル/低品質事例を解説します。著者は、日系メーカーの中国工場で品質部長の経験があり、現役の設計者でもある遠藤健治氏です。

色や寿命のバラつき目立つ 生産時の無選別が原因

 中国では、品質に難がある照明用LEDが平気で販売されています。ところが、そうとは知らずに、そうした低品質な照明用LEDを使ってしまう日本企業が後を絶ちません。

色がバラつく車載向けLED

 図1は、自動車に使う照明用LEDモジュールです。高輝度の白色LED素子を複数配置し、光が周囲に拡散するようにしてあります。ヘッドライトやポジションランプ(スモールランプ)、ルームランプ、ブレーキランプなどの光源に使えるように、ありとあらゆる形状の照明用LEDモジュールがそろっています。電球にはないシャープな白色光と低消費電力が魅力で、採用する自動車メーカーや自動車部品メーカーが増えています。

 最近、筆者は、中国メーカー製のポジションランプやルームランプを調達しました。光源に照明用LEDモジュールを使ったものです。これらの製品で、筆者は2つの思わぬ品質トラブルに直面しました。[1]色合いと明るさが大きくバラつく、[2]寿命が短すぎる、というものです。

 [1]の色合いと明るさが大きくバラつく品質トラブルとは、同じ型番のランプであるにもかかわらず、色合いや明るさがに大きな差がついてしまう問題です。同じ製品なのに、色合いや明るさが異なるのは、品質の安定性を重視する日本メーカーとしては看過できません。さらに、複数のランプを取り付ける製品では、ランプによる差が顕著に表れます。例えば、1台のクルマに左右対称に付けるポジションランプでは、色合いや明るさが微妙に異なると、左右のバランスが崩れて商品力があからさまに低下してしまいます。

 この品質トラブルの原因は、LED素子を選別していないことにあります。LED素子は半導体です。半導体は製造過程においてさまざまなバラつきが発生します。安価な白色LED素子は、青色LEDチップの上に黄色の蛍光体を塗布して造る方法が一般的です。青色の光と黄色の光を同時に発することで、擬似的に白色の光に見えるようにしています。このとき、塗布する蛍光体の厚さの微妙な差や、LED素子の各層の厚さ、結晶のわずかな変化などにより、生産したLED素子には、どうしても色合いや明るさにバラつきが生じてしまうのです。

 もちろん、こうしたバラつきの幅を小さくするのがLED素子メーカーの腕の見せ所ではありますが、バラつきをゼロにすることは現実には不可能です。そのため、日本のLED素子メーカーは、生産したLED素子を品質の水準によって仕分けています。

 

〔以下、日経ものづくり2014年1月号に掲載〕

図1●中国メーカー製車載用LEDモジュール
図1●中国メーカー製車載用LEDモジュール
色合いや明るさがバラつく、寿命が短いといった品質トラブルを招くケースがある。

遠藤健治(えんどう・けんじ)
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者兼海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場で製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国を股にかけて活躍中。著書に「日系中国工場製造部長奮闘記」「中国低価格部品調達記」(共に日経BP社)などがある。