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材料力学マンダラ
第2巻 壊れない設計への第一歩


●「鋳鉄ハブ」と聞いて,あなたは何を感じるか
●各種荷重が作用したときの材料の壊れ方を知る
●破損のクライテリアから壊れない設計へ

 三菱ふそうトラック・バスの一連の大量リコールは,ハブの強度不足が原因とされています。材料は鋳鉄。『日経ものづくり』によれば,同社を含め主要トラックメーカー4社すべてが鋳鉄製のハブを使用しているとのこと1)。しかしそれを聞いて,私は少なからず違和感を覚えましたが,読者の皆さんはいかがでしたでしょうか。鋳鉄製ハブの安全性に関する議論はほかの専門家にお任せするとして,ここではあくまで一般論を述べたいと思います。

 私が抱いた違和感とは,引っ張り応力が作用する部位に鋳鉄を適用するということの是非。実は,鋳鉄という材料はそもそも圧縮部材です。すなわち,用途として圧縮応力がかかる部位には適すが,逆に引っ張り応力が作用する部位には適さない。従って歴史的には,高い振動減衰能や耐摩耗性といった優れた特性を生かしつつ,例えば機械分野では旋盤のベッド,土木分野では柱といった,いわゆる圧縮応力下で使用する部位(圧縮部材)に利用してきたのです。

 もちろん,これにはきちんとした理由があります。鋳鉄の組織の中に析出している黒鉛が角を持つ(片状である)ため,引っ張り応力が作用したときにそこに応力が集中して亀裂が入りやすい。これがJIS(日本工業規格)でいう「FC(普通鋳鉄)」で,だから引っ張り荷重や曲げ荷重に弱いとされるのです。

広島大学大学院教授
沢 俊行