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電子ペーパーや有機ELパネル,太陽電池,人工皮膚など,有機半導体を利用した曲げられるエレクトロニクス素子の研究開発が活発だ。この分野に新たなデバイスが加わった。東京大学が開発したシート型スキャナである。厚さが0.4mm以下と薄く,プラスチック基板を利用するので曲げられる。機構部品や専用の光源を必要としない。さらに,従来のスキャナと遜色ない読み出し速度を実現している。有機トランジスタはスイッチング速度が遅いため,これまで多くの有機エレクトロニクス素子は動作速度が課題となってきたが,今回のシート型スキャナは光センサの読み出し回路を工夫することで課題を克服した。この回路技術は,スキャナ以外にも他の有機エレクトロニクス素子に応用できるという。 (大久保 聡=本誌)


 我々は,有機半導体を用いたシート型スキャナを試作し,原理実験に成功した。現在市販されているスキャナのほとんどは,光センサを一直線上に並べた1次元アレイを,被写体となる物体の上から下まで機械的に動かして,文字や絵などの画像データをコンピュータに読み込んでいる。それに対して今回は,複数の光センサを2次元状に並べ,機械的にスキャンする代わりに,有機トランジスタで電子的にスキャンして画像を取り込む方式を採用した。この結果,薄くて軽いスキャナを実現できた。

 今回のシート型スキャナのもう1つの特徴は曲げられる点である。フィルム状のプラスチック基板上に回路を作製しているからだ。このため,例えば,丸めてポケットにしまい,そのまま持ち運ぶことができる。また,これまでスキャンが難しかった曲面状の被写体にも密着するため,正しく撮像できる。例えば,ワインのラベルをはがさずにボトルに付いたままスキャンするなど,ユニークな使い方に広げられそうだ。