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開発の鉄人 ものづくりを語る
第10回 一生ものはこう作る



30年以上も使われ続けている機械がある。
頑丈な生産機械ならありそうな話だけど,これは小さな日用品だ。
大きさといい,構造といい,数年間で使い捨てにされる家電製品に近い。
この長寿を可能にしたのはレンタルというビジネス手法だ。
「買い替えさせよう」という動機がないから,
計画的陳腐化をさせなくても,商売がうまくいく。


 トイレでよく見掛ける銀色の箱がある(図1)。小用の間はほかにすることもないから,目の前にあるあの箱をじっと見詰めちゃったりするよね。だから結構覚えているんだけど,正面には「Calmic」と書いてある。あれは日本カルミック(本社東京)という会社の製品で「サニタイザー」という。箱からは水洗が終わるころに洗浄剤,殺菌剤が溶け出してくる。汚れ,におい,尿石,排水管の詰まりなど,トイレにまつわる問題を解決する。
 カルミックはサニタイザーをはじめとする機器をユーザーにレンタルしている。逆に言えば売らない。カルミックは「商品でなく『効果』を買っていただく」と表現する。ユーザーは液の補充も保守も,何もしない。カルミックの社員が来て,ピカピカに磨き上げて帰っていく。

「開発の鉄人」こと 多喜 義彦
多喜義彦氏
1951年生まれ。1988年システム・インテグレーション設立,代表取締役に就任し現在に至る。現在40数社の顧問,NPO日本知的財産戦略協議会理事長,宇宙航空研究開発機構知財アドバイザー,日本特許情報機構理事,立教大学大学院講師などを務める。