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ドキュメント
レジェンドの開発 第2回

運命の邂逅

本田技術研究所入社時から4輪駆動伝達システム「SH-4WD」,通称「SH-4駆」の開発に心血を注いできた芝端康二。ところが,SH-4駆の商品化を目前にした芝端に開発凍結が言い渡される。その後,芝端はSH-4駆の特性を生かした2輪駆動車向けの「ATTS」を商品化する一方で,SH-4駆の研究も水面下で続けた。その芝端に再びSH-4駆を世に送り出すチャンスが訪れる。

 米国ホンダのトップによる試乗会は成功裏に終わった。彼らを魅了し賛辞を欲しいままにした「SH-4駆」。真夜中の牧場で突然ひらめいてから10年以上の時を経て,今ようやく商品化に向けての本格的な開発がスタートした。
 それなのに,SH-4駆の生みの親である芝端康二の顔色がさえない。時折不安な表情さえも浮かべる。無理もない。SH-4駆を載せる肝心のクルマがまだ決まっていないのだから。羅針盤を持たずに暗黒の大海に船出する,あてなき航海。これが,当時の芝端の偽らざる心境だった。
 不安でいっぱいの航海には,頼れる仲間が要る。芝端の脳裏に浮かぶのは,かつて「インテグラ」への搭載を目指して苦楽を共にした,あの面々。SH-4駆を知り尽くす彼らなら,苦難が予想される航海のパートナーとして,これほど頼もしいことはない。
 渥美淑弘。あの時の中核メンバーの1人で,今は芝端とともに2000年発売の「S2000 typeV」向けに,車速と舵角によりステアリングのギア比が変わる「VGS(Various Gear Ratio Steering)」の開発を担当する。芝端は思う。彼なら…。
 しかし,問題は渥美の気持ち。インテグラに搭載するはずだったSH-4駆の開発凍結が決まった時,渥美は芝端にこう言った。「メカトロニクス関連だけは二度とやりたくない」と。SH-4駆の開発に全身全霊を捧げて取り組んだ彼にとって,当時の会社の決断はあまりに残酷だった。