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日経ものづくり 中国的秘密・日本的秘策

「お客様は神様です」に異議あり
要求に応じすぎると墓穴を掘る

自社製品を購入してくれる顧客からの要求や依頼は,当然優先的に対応しなければならない。だが,中には優位な立場を利用して,技術やノウハウを奪おうとする顧客も存在する。研修の要請や改善への対処など,表向きは正当な要求でも,裏には貴重な情報を奪い取る狙いが隠れていることも。顧客を疑うことも時には必要だ。 (本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 コピー商品というと,多くの人は設計の模倣ばかりに目が行くようですが,それだけでものが完成するわけではありません。いくら巧妙に設計をまねたとしても,製造技術が伴わなければ,コピー商品も市場に出回りようがないのです。そのため,コピー商品を市場投入するメーカーの多くは,日系メーカーから設計だけでなく,製造技術をも盗み取ろうと虎視たんたんと狙っています。実際,日系メーカーの生産現場からノウハウが漏れ,それがコピー商品のはんらんを招いたという例が後を絶ちません。

人の移動がコピー商品のもと
 かつて私が,ある日系の電子機器メーカーの工場で働いていた時のことです。当時はパソコン産業が大発展を遂げる入り口のところ。中国においてもパソコン関連の会社が成長に向けて飛躍する最中にありました。そうした時代の流れに乗り,私がいた電子機器メーカーは,あるパソコン関連製品のメカ部品を大量生産し,複数の台湾メーカーに販売するようになりました。
 顧客である台湾メーカーは,私たちのメーカーからメカ部品を仕入れ,自社で内製した回路基板と筐体とを組み合わせて完成品に仕上げるのです。当初,このパソコン関連製品の市場は日系の大手メーカーが中心を占めていたのですが,コスト競争が激化するにつれて,台湾メーカーが続々と市場に参入し,熾烈な価格競争に突入していきました。
 こうした中,私は品質をはじめ,製品にまつわるさまざまな問題を処理するために,中国はもちろん,アジア各地を飛び回る日々を送っていました。中でも,台湾には何度足を運んだか分かりません。顧客である台湾メーカーの本社や開発センターが台北や新竹,高雄といった台湾の都市部にあったからです。中国やマレーシアに位置する彼らの工場では手に負えない製造上の課題や不具合が発見されるたびに,私が彼らの本社や開発センターに乗り込んでいって解決の手助けをしていたからです。