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日経ものづくり 中国的秘密・日本的秘策

第7回
たかがねじ,されどねじ
見えにくい欠陥でトラブルが多発

コスト削減競争の激化で,ねじのコストも無視できない状況になってきた。ところが,低コストを狙って中国製のねじに切り替えるや否や,生産ラインでトラブルが発生。サンプルねじの検査を徹底しても特に問題は見つからない。現場の“対症療法”で対応するにも限界がある。ようやく見つけた原因は意外なものだった。(本誌)

遠藤 健治 海外進出コンサルタント


 技術者が普段何気なく使っているねじ。もちろん,こうしたねじにもたくさんの技術が特許として権利化されています。ねじを締めるときに削りカスが出にくいセルフタップねじや,ワッシャと一体になったねじなどはその代表格でしょう。こうした特許技術をコピーした中国製のねじが,実はちょっとした工夫で“合法ねじ”になると一般にいわれています。価格は日本製のねじの1/10以下で購入できるものもあるほどの安さ。中でも,特にねじを多く使用する精密機器のような製品を造るメーカーにとっては願ってもない部品です。  ところが,その恩恵を一気に吹き飛ばし,会社の信用をも失墜させかねないトラブルがかつて日系メーカーで多発し,今なお起きています。

中国生産のために部品を簡素化
 かつて,私が勤務していた日本にある大手電子機器メーカーでは,コスト削減活動が急ピッチで進んでいました。資材購買部門では部品の購入価格を下げ,生産部門では従業員が同じ作業を速く行うための改善活動を展開。私が所属する開発部門では,いかに簡単に造れるかを目指す「シンプル設計」に力を入れていました。そのために製品の設計構造を見直し,不要な部品を徹底的に減らしていったのです。この際の不要な部品の代表が,ねじや接着剤などの締結部品でした。
 ところが,日本の工場におけるこうしたコスト削減活動も限界に達し,海外進出の波が押し寄せて来たのです。進出先の多くはやはり中国でした。
 「安かろう悪かろう」の言葉でも知られたように,中国の工場で生産を始めた当初の製品の品質はお世辞にも良くはありませんでした。部品であろうと作業であろうと,良いといえる品質のものは何一つなかったと断言できるほどです。例えば,コスト削減のために“一体物”として設計されたある樹脂製部品は,複雑な形状が災いして不良を呼ぶ状態。それを提供する部品メーカーは技術力が不十分で,その対策を要求しても解決できず,むしろ彼らを混乱させるだけでした。