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日経ものづくり 事故は語る

エンジンの不具合で小型機墜落
連絡不足が部品取り付け不備を招く

2003年7月11日,
飛行訓練を終えた航空大学校の小型機が
宮崎空港に向かっていた。
その途中で,突然「ブスブス」という音とともに
機体が揺れ,エンジンが停止する。
飛行能力を失った小型機は,
空港から南に約3km離れた水田に墜落。
教員と練習生2人の計3人が死亡し,
練習生1人が重傷を負った。

 墜落した小型機は「ビーチクラフト式A36型」。唯一の生存者である練習生の証言によると,エンジン停止直前までは別の練習生が操縦していたが,ブスブスという音がしてからは教員が操縦を代わる。小型機は宮崎空港の管制圏に進入し,ダウン・ウインド・レッグに向けて降下するところだった。
 操縦輪を握った教員はエンジンのスロットルを入れたものの「パワーがついてくる感じはしなかった」(生き残った練習生)という。最終的にプロペラが止まった小型機は,水田めがけて急降下。機体は,炎上しなかったものの大破した。
 墜落現場を視察した航空・鉄道事故調査委員会は,エンジンのクランクケース上部に穴や膨らみ,亀裂といった損傷を確認。前述の証言と合わせ,エンジン内部からの損傷を疑い,調査を進めた。

カウンタウエートの部品が脱落
 事故機のエンジンは,米Teledyne Continental Motors(TCM)社製で,6気筒水平対向式。機体の前方に,機体首尾線にシリンダが垂直となる向きで搭載する。各シリンダには,機体右手後方が1番,左手後方が2番,・・・,左手前方が6番と,番号が割り振られている。穴や膨らみなどの損傷は,1番シリンダと2番シリンダの近くに集中していた。
 クランクシャフトはクランクケースから前方に突き出た形で,先端にプロペラを直結する。つまり,エンジン回転数がそのままプロペラ回転数となる。1番クランクピンと2番クランクピンの間と,3番クランクピンと4番クランクピンの間には,釣り合いを取るための重り(カウンタウエート)を,それぞれ2個ずつ,計4個取り付ける。クランクピンはクランクシャフトとコネクティング・ロッド(コンロッド)の接続部で,この機構によりピストンの往復運動がクランクシャフトの回転運動に変換される。