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「いやー,例の件はなかなかうまくいかないね」

「そんなに落ち込むことないよ。まあ,今夜はぱーっと行こう」

 STI Design Centerの近くにあるレストラン「Light House」には,毎週木曜日の夕方になると決まってCell開発チームの技術者たちが集まってくるのだった。話題はおのずと各自が担当しているプロジェクトの進行状況になる。オフィスでは面と向かって言えないことでも,ここでなら腹を割って話せる雰囲気が,技術者たちを引き付けた。

 日本から来たエンジニアにとっては,米国のエンジニアたちがその輪に加わっていることが最初は驚きだった。ひとたびオフィスを出れば家族の待つ我が家へまっしぐらというのが,米国流の働き方とばかり思っていたからだ。ところが現実は違った。多くのエンジニアがオフィスを離れても,ちょっとした愚痴に親身になって耳を傾けてくれる。それはまるで日本の居酒屋で同僚と話をしているかのようだった。

 中には,休みになると野球やスキーといったイベントを率先して企画し,家族ぐるみで開発チームの連帯感を強めようと努力してくれる米国人エンジニアもいた。しばらくすると日本のエンジニアたちは,テキサスには「southern hospitality」,すなわち米国南部に特有のもてなしの心が息づいていることを知る。ひとたび打ち解ければ,人情の厚さは洋の東西を問わず変わらないのだった。