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日経ものづくり 事故は語る

拡散するアスベスト被害
将来に残す二つの禍根



アスベスト被害が今明らかになる必然
アスベスト労災の認定はさらに増える
アスベスト恐怖はもう一度やって来る
アスベスト同様のリスクを持つ材料も
アスベスト騒動から学び取る教訓とは

アスベストの被害が拡大している。ニ〇〇五年七月一五日現在、アスベストが原因の疾患による死亡者は三七四人に達した。甚大な数字だが、死亡者数は今後さらに増え続けるとみられる。ここにきて、こうしたアスベスト被害が次々と明らかになるのには「必然」といえる理由がある。そして我々は、今回のアスベスト禍から、ある教訓を学び取らなければならない。第二、第三のアスベスト被害を出さないために。

 日本中を恐怖に陥れた今回のアスベスト(石綿)禍の震源は,日本最大のアスベストユーザーだったクボタ。2005年6月29日,同社は記者会見を開き,1978~2004年度の間に社員や関係会社社員(共に退職者を含む)79人が肺がんや中皮腫で亡くなっていたことを明らかにした。
 このクボタの発表後,アスベスト被害の状況は雪崩を打ったように次々と白日の下にさらされていく。建材大手のニチアスで141人死亡,エーアンドエーマテリアルで27人死亡,日本バルカー工業で20人死亡・・・。経済産業省の調査で,2005年7月15日までに,アスベストが原因の疾患による死亡者は374人に膨れ上がった。
 アスベストによる健康被害は古くから疑われ,公衆衛生などの専門家を中心にそれが肺がんや中皮腫を引き起こすことは周知の事実だった。しかし今回の一連の騒動の中で,そんな専門家さえ驚愕させる事実が二つあった。
 一つは,1社当たりの被害規模の大きさ。「労働災害では3人以上亡くなると重大災害となる。各社から発表されている死亡者数は,それをはるかに上回る。まさか,これほど被害規模が大きいとは思わなかった」〔中央労働災害防止協会(中災防)労働衛生調査分析センター副所長の工藤光弘氏〕。
 もう一つは,近隣への影響だ。クボタ旧神崎工場の近隣では,半径1km以内に住んでいた住民3人が中皮腫を発症した。「アスベストの被害が及ぶ範囲は,作業者とその家族というのが通説。近隣住民に健康被害が及んだ例は,聞いたことがなかった」(国立環境研究所環境健康研究領域健康指標研究室室長の平野靖史郎氏)。
 拡散するアスベスト被害。これはほんの序章にすぎない。

日経ものづくり 特集
図●アスベストの輸入量の推移
1960年代に入り急拡大していく。図中のアスベスト関連疾患は発生年次を示した1)。