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日経ものづくり 特報

110km/hで暴走する列車
機能が無効だったATS

JR福知山線横転事故で事故調が異例の建議提出

107人の尊い命が露と消えたJR福知山線横転事故。あれから4カ月半が過ぎ,航空・鉄道事故調査委員会による経過報告「西日本旅客鉄道株式会社福知山線列車脱線事故に係る鉄道事故調査について」がまとまった。同委員会は事故当時の状況に言及しつつ,事故の再発防止のために,今すぐ実施すべき施策を建議した。それは,列車運行の安全を担う自動列車停止装置,いわゆるATSの機能向上など4点ある。

 ありふれた通勤・通学風景が一瞬のうちに地獄絵巻と化し,日本中が身震いしたJR福知山線横転事故。忘れもしない,2005年4月25日の出来事だった。
 JR西日本の宝塚駅発同志社前駅行き上り快速電車5418M列車は同日9時16分すぎ,定刻(9時14分50秒)より1分20秒前後遅れて伊丹駅を出発した。尼崎駅までの通過駅は猪名寺と塚口の2駅。問題の列車は9時18分30秒ごろ,塚口駅を定刻(9時17分10秒)より1分17秒前後遅れて通過し,尼崎駅へと向かった。
 列車が上り1k949m(尼崎駅起点から1949m)地点に差し掛かると,緩和曲線から半径304mの右曲線に移る。凄惨な事故が起きたのは,この右曲線を走行しているさなか。9時18分54秒前後,上り1k814m(同1814m)地点付近だった。
 まず,列車の編成前部の車両が左に脱線。先頭車両の1両目は横転し,前部が線路左側にあるマンション1階の機械式駐車場奥の壁に,後部下面がマンション北西側の柱に激突した。2両目は,中央部左側面が1両目の後部を間に挟んでマンション北西側の柱に,後部左側面が北東側の柱にまるで紙のようにひしゃげて巻き付く。続く3両目は前後の向きが変わって前台車の2軸が左に,後台車の2軸が右に,4両目については前後台車の4軸すべてが右に脱線。5両目は,前台車の2軸が左に脱線し,後台車の2軸の左車輪がレールから浮いて脱線した。6両目と7両目に関しては,脱線はしなかった。これにより,乗客106人,運転士1人の計107人が死亡,同年8月19日時点で555人が負傷した。
 事故の調査に当たったのは,航空・鉄道事故調査委員会(委員長:佐藤淳造氏)。同委員会は「多角的な事実調査と科学的な解析に基づく最終結論を得るまでには相応の日時を要す。しかし,近年例を見ない重大な鉄道事故であることから,再発防止対策などの検討が早急に必要」と判断。同年9月6日に経過報告とともに,直ちに講ずべき施策4点を建議したのである。

日経ものづくり 特報
図●事故現場の略図
上り1k949m地点から右曲線が始まる。制限速度は70km/hだった。