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出典:日経エレクトロニクス,2008年12月29日,pp.24-26(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 ネットと家電の融合。これをインターネットの世界から積極的に推進しているのがヤフーである。同社は,パソコンのみならずテレビ,ケータイ,カーナビを含めたあらゆるディスプレイにヤフーのコンテンツを届ける「Yahoo! Everywhere構想」を掲げる。この構想を推進するのが,ソニーの元ソフトウエア技術者で,AVパソコン「VAIO」の事業戦略部統括部長などを歴任した坂東氏である。

(写真:陶山 勉)
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─Yahoo! Everywhere構想を実現するため,どのような立ち位置で家電メーカーと協業しているのか。

 極端な物言いだが,家電向けネットワーク・サービスの提供者は,常に家電メーカーと「戦い」続けるべきだと考えている。家電のライバルであるパソコンの世界では,日進月歩でハードウエア/ソフトウエアの性能が高まっている。もし家電側に進化がなければ,究極的にはユーザーの考えが「AV機器がなくても,パソコンだけあればいい」となりかねない。

 例の一つが,ユーザー・インタフェース(UI)実行環境だ。ネットワーク・サービスの肝は,何より使い勝手の良いUIにある。我々が「UI実行環境の仕様は,このくらいでいいよ」と妥協した途端,家電メーカーはその仕様を「標準」として固定してしまうだろう。テレビならテレビなりに独自のUI,もっと言えば「世界観」を磨かないと,最後には誰もサービスを使ってくれなくなる。

 私がこうした考えに至ったのは,2005年にソニーからヤフーに移籍した後,米Yahoo! Inc.の創業者であるJerry Yangに「志が低い!」と一喝されたことが一つのきっかけだった。

 当時,ソニーから移籍したばかりの私が目指していたのは,家庭内ネットワーク規格「DLNA(Digital Living Network Alliance)」の仕組みを使って,ヤフーのインターネット・サービスをテレビなどの家電に届けることだった。今後の家電には,DLNA経由のコンテンツを扱うUI実行環境が標準搭載される。それを使えば,インターネット上のコンテンツを,テレビに最適な形に加工して届けられると考えた。

 この仕組みのプロトタイプをJerry に見せたところ,「このUIは何だ。これではネットワーク・サービスとは言えない」と手厳しい評価を受けた。

 Jerryには,Yahoo!社の創業者として,インターネットの世界をゼロから築いてきたという自負があったのだろう。Yahoo!が理想と考えるサービスを提供するため,インターネットの技術を自らの手で拡張してきた。彼としては「家電にDLNAの機能が入ったからといって, Yahoo!がそれに迎合する必要はない。ゼロから家電のサービスをつくり上げる志を持て」と言いたかったのだと思う。