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民主化の契機になったインターネット

加藤 2010~2011年にアフリカ北部で広がった大規模な反政府デモや抗議活動などの民主化運動は記憶に新しいでしょう。チュニジアのジャスミン革命を皮切りに、エジプトやリビアでも長期政権が崩壊した。こうした動きを後押ししたのは、インターネット利用者の拡大と言われています。今や先進国だけではなく、途上国でもSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が普及しました。情報が瞬時に共有されるインターネットの自由が、民主化の契機になったわけです。

―― なるほど。ただ、インターネットは草の根的に普及してきました。それは、「自由」という枠組みの上で進んできたように思います。素人目に見ると、その自由なネットワークについて国際的な枠組みで制度などを話し合うということに少し違和感があります。

加藤 確かにインターネットは、「自律」「協調」「分散」というキーワードを基に拡大してきました。「自由」という発想があるからこそ、ここまで普及したのだと思います。

 ただし、もはや自由だけでは巨大化したインターネットを運営できない。利用者が増えるほどに、最低限守らなければならないルール、つまり規制もある程度は必要になります。そこで問題になるのは、「公的機関がどこまで規制に介入するか」という線引きです。その手法に世界のスタンダードがあるわけではありません。国や地域の文化、宗教、風土などによって、線引きすべき内容は異なるわけです。

途上国を中心に開催
左は、ケニアのナイロビで開催された2011年のIGF会議の様子。右は、ナイロビ市内。(写真提供:加藤 幹之氏)
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 規制と自由の線を引くことについては、どこの国でも難しい課題になっています。日本でも、同じことですよね。だからこそ、各国の関係者が集まって、社会的、技術的な課題を解決するそれぞれの国の取り組みを知り、理解するIGFのような場の重要性が増しているのです。

―― 加藤さんご自身は、なぜIGFに参画しているのですか。

加藤 実は、現在の仕事と直接の関係はありません。ある意味、ライフワークの一つになっています。

 前職の富士通で米国ワシントンD.C.に駐在していた時に、「Internet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)」のアジア太平洋豪州地区の代表理事を務めました。ICANNは、インターネットのドメイン名やIPアドレスを管理する非営利組織です。知的財産権が専門だったこともあり、インターネット関連の法律について議論する団体「Internet Law & Policy Forum(ILPF)」の会長としても活動しました。

 ちょうどインターネットが先進国で急速に普及していた時代です。こうした活動の中で、インターネットが社会に大きな変革をもたらす様を見てきました。だから、新しい課題を国際的な視点で議論していくことは、とても重要なことだと感じています。それが、今でも関わりを持っている理由です。