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インターネットの主役は、途上国の利用者に

―― これまでに加藤さんは7回のIGF世界会議に参加したわけですが、その間に会議でなされる議論には、何か変化がありましたか。

加藤 一つは、参加者の多様性が高まっていることでしょう。プライバシーや法律、技術などの専門性を備えた人々の参加が増えています。かつてに比べて、話し合う課題が具体的で専門性の高いテーマになってきたことが背景にあります。

(写真:加藤 康)
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 もう一つは、先ほど話したように、インターネットを舞台にした活動の主役が、先進国の利用者から途上国の利用者へと移行していることです。

 最初の頃のIGF会議では、「米国を中心としたインターネットの制度や技術、文化を開放してほしい」と、途上国から訴える意見が目立っていました。ドメイン名の情報を保持するルート(ネーム)サーバーのほとんどが米国に集中しているといったことが理由の一つだと思います。技術的に見るとバックアップ用のミラーサーバーはいろいろな国にあるので実情は違うのですが。それでも、「インターネットは米国の覇権の象徴」という印象が大きかったのでしょう。

 その議論はなくなったわけではありません。ただし、今やドメイン名は英語だけではなくなりました。世界共通のインフラという印象が強まったことで、IGFでの議論は、より具体的かつ本質的なテーマで活発になっているように思います。

―― この2~3年で世界的に起きたスマートフォンやタブレット端末の普及も議論に影響していそうですね。

加藤 もちろん、モバイル・インターネットの興隆は大きな流れです。インターネット人口の爆発的な拡大は、モバイル技術に起因しているところが大きい。

 技術的に見ても、旧来の技術資産を持たず、これから普及が加速する途上国の方が、一足飛びに技術の進化が先に進む可能性があります。IPv4アドレスの枯渇で関心が高まっている「IPv6アドレス」もしかり、モバイル・インターネットを実現する無線通信技術もしかりです。固定通信のブロードバンドを飛び越して、まずはモバイルから普及していく。技術が広がる際の流れも、これまでとは180度違う様相になってきています。

 特に、途上国ではモバイル・インターネットが利用者拡大で中心的な役割を果たしている。無線通信技術の普及でインターネットにアクセスできる環境が急速に広がっています。これまで先進国のものだったインターネットが途上国に広がったことで、その通信網の上で生じる社会的な課題は一気に数十億人の課題になりつつあるわけです。