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世界に打って出ようと思ったら、意見を発信すべし

―― そうした中でIGFに参加する意義というのは、どこにあるのでしょうか。先ほど、加藤さんは「IGFは制度や技術仕様を決める決議機関ではない」と話していました。IGFに参加することで、何か得るものはありますか。Tech-On!の読者のような技術系のビジネスパーソンにとっては、社会制度や法律の話題は少し遠いテーマという印象を抱いてしまうかもしれません。

加藤 その点は大きな誤解があると感じています。実は、IGFのような国際的な意見交換の場で次世代のインターネット関連の技術や社会システムを実現する世界の「空気」が醸成されているのです。それを現場で感じ取ることは、インターネット関連の技術やビジネスで世界に打って出るためには必要不可欠だと思います。

 今、世界の産業界をリードしているのは、インターネットをベースにしたビジネスという意見に異論はないでしょう。それは、決してWebサービスを開発しているようなインターネット企業だけに関係することではありません。製造業でも同じです。家電のようなBtoC(消費者向けビジネス)の事業はもちろんのこと、BtoB(企業間取引)の事業でもインターネットの存在は無視できなくなりました。

(写真:加藤 康)
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 インターネットを利用する事業のビジネスモデルや運用手法の新しいアイデア、ヒントは、IGFのような場から生まれてくると言って過言ではありません。

 新しいビジネスモデルで世界に打って出ようと思ったら、世界の関係者が一同に会する会議で自分の意見を発信し、ぶつけてみる必要があります。IGFは、将来の技術や社会制度の世界標準をセットするキッカケになっているのです。展示会や標準化会議のような場はもちろん重要ですが、これからインターネットで何を創造していくべきかを考え、自らの取り組みを世界に発信する場として、IGFの存在感は増しています。

―― 日本からの参加は多いのでしょうか。

加藤 残念ながら、とても少ないのが実情です。世界からは「インターネットの父」と呼ばれるVinton Cerf氏をはじめとする情報通信関連の著名な研究者、Microsoft社やAmazon.com社、Facebook社といった米国の大手IT企業の幹部クラスが多く参加しています。途上国からも、インドのIT企業などの参加者が目立ちます。それに比べると、日本企業はほとんど存在感がないという印象でしょう。

 この状況は機会損失になっていると思うのです。例えば、モバイル・インターネットが早くから日本のように社会に浸透している国は、実はそれほど多くない。世界的に見ても、日本にはかなりの先進性があります。それは技術だけではなく、インターネットがもたらす社会的な課題を解決するための制度やシステムについても同様です。

 2000年ころからモバイル・インターネットが普及した日本では「当たり前」になってしまった課題に今、世界は初めてぶつかって悩んでいるわけです。具体的には、個人のプライバシー保護や、青少年を有害サイトから守るWebサイトのフィルタリング、知的財産権など、多くの課題を抱えています。