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世界は日本の発信を待っている

―― 国の制度や文化が違うと、日本で生まれた技術や手法は通用しないのでは。

加藤 確かに日本の手法をそのまま他の国で導入できるわけではありません。しかし、「モバイルで先に進んだ日本のような国が、どのように課題を解決してきたか」、そのプロセスや内容を知りたい関係者は世界中にいます。

 日本の関係者が自ら発信しなければ、当然のことながら世界は別の解決方法を考えるでしょう。仮に、その解決方法が既に日本では当たり前の内容であっても、日本の先進性は誰の目にも止らず、世界的には「なかったこと」になってしまいます。

 例えば、「自然災害におけるインターネットの役割」といった話題は、世界で多くの関心を集めているテーマです。2010年にはハイチで、2011年にはニュージーランドや日本で大震災による多大な被害がありました。

 実際、2011年にケニアで開催されたIGFで日本からの参加者が報告した「東日本大震災でのインターネットの役割」の話題は、世界中のインターネット関係者の共感を呼んでいました。それは、これだけインターネットが普及した先進国で起きた大規模な自然災害は、歴史的に見ても初めてのことだったからです。

 こうした発信をことあるごとに続けていかないと、インターネットの世界で日本の存在感は薄くなっていくでしょう。それは懸念すべきことだと思います。

―― 日本に興味を持っている人は世界中にいるのに、世界との対話に出掛けていく人がほとんどいないという現実があるわけですね。

加藤 IGFが途上国で開催されているということだけでも、参加に値するのではないでしょうか。日本から見ると遠い地域ですが、そういう場所に足を運ぶと世界で広がっているインターネットの熱の本質を感じることができる。この数年、日本の製造業は途上国でのビジネス拡大に力を入れているわけで、現場で感じる息吹は、グローバル・ビジネスを手掛ける際の大きなヒントにつながるはずです。

天然資源の富を背景にインターネットの拠点へ
2012年のIGFが開催されたアゼルバイジャンの首都バクーは、カスピ海を臨む場所にある。右はIGF会議の様子。(写真提供:加藤 幹之氏)
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 2012年には、アゼルバイジャンの首都バクーでIGFが開催されました。カスピ海西岸に位置する旧ソビエト連邦から独立した国です。同国は国内で産出される豊富な石油や天然ガスがもたらす富を背景に、インターネット関連ビジネスの立ち上げに本腰を入れようとしています。地政学的な場所の利を生かしながら「アジアと欧州」「中東と欧州」をつなぐインターネットの拠点になろうと国を挙げた取り組みを進めているのです。こうした話題は、実際に足を運んでみないとなかなか体感する機会がないですよね。

 ここにきて、世界規模の全体会議に加え、地域ごとにIGFを開催する動きも活発です。先進国をはじめ、アジアやアフリカ、南米などの新興国で地域IGFが設立され、対話の場を設けています。