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染谷氏の研究グループが開発したフレキシブル・センサーシートを手に貼り付けているところ(写真:日経エレクトロニクスが撮影)
染谷氏の研究グループが開発したフレキシブル・センサーシートを手に貼り付けているところ(写真:日経エレクトロニクスが撮影)
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 肌に密着させることが可能なセンサーシートを開発し、医療関係者などとの共同研究を進める、東京大学 大学院 工学系研究科 教授 染谷隆夫氏。前編では、有機エレクトロニクスを使ったフレキシブル・センサーシートで生体情報を検知する意義などを聞いた(前編)。後編では、医療分野での器具の使われ方が有機エレクトロニクスに合う意外な理由や、医療分野以外での応用の可能性、実現に向けて染谷氏が重視することなどを聞いた。(聞き手は、大久保 聡=日経BP半導体リサーチ)

――有機エレクトロニクスの研究開発を振り返ると、“有機エレクトロニクスならでは”の用途を探し出す苦労の連続であった。一時期、有機エレクトロニクスを使って包装紙などの製品パッケージを電子化することが盛んに研究開発されていた。有機エレクトロニクスはSi系のエレクトロニクスに比べて信頼性が低いが、印刷技術により低コストで製造できる可能性があることから、包装紙と同じく短期間で廃棄する用途に向くといわれていた。

染谷氏 医療分野への応用を考えると、こうしたディスポーザブル・エレクトロニクスの考え方は生きてくる。注射針など医療で使うモノは、感染防止の目的などから“使ったら廃棄”が基本になっている。

――医療向けのハードルは高くないか。

染谷氏 一口に医療向けといっても、求められるレベルは複数段階ある。フレキシブル・センサーシートは、まずは生命への関わりが低いところから入り、段階的にレベルを上げていくことになるだろう。

 生体情報を検知する用途は、医療向けだけでない。ヘルスケアなど、用途によっては認証は不要だ。ヘルスケアなど健康管理以外でも、生体情報を活用する用途はある。例えば、緊張度の把握である。どういう状況で人間はストレスを感じたり、逆にリラックスしたりするのかを把握するために生体情報の検知が生かせる。

 部屋やオフィスのレイアウトによって人間がどのようなストレスを感じるのかを把握して、レイアウトを最適化するといったことは原理的に可能であろう。こうした健康でも医療でもない用途は、潜在的に多いとみている。これまで人間の心理を理解するにはアンケートによる評価が多かった。生体情報の検知により、人間の心理の数値化にも挑みたい。挑戦する意義は大きい。

 生体情報を検知し、データを集めるだけでは意味がない。取得したデータが何を意味するのかを理解して初めて、サービスに生かせる。例えば、自動車を運転するドライバーの血圧をモニターしているだけでは、価値が生まれない。そのときの道路状況はどうだったかなど、人間を取り巻く状況も合わせてデータを解析してこそ価値が生まれる。

従来のデバイスでは、生体情報の検知に限界があったが、フレキシブルな柔らかいセンサーを使うことで、これまで取得困難だったデータが容易に手に入るであろう。これまでデータがないために実施できなかった解析が可能になり、それが新サービスにつながることを期待している。