PR
ジェムコ日本経営の高橋氏
ジェムコ日本経営の高橋氏
[画像のクリックで拡大表示]

タイに切り替えれば済む?

 今回の食肉問題では、中国からの輸入を止め、タイからの輸入に切り替えるという話が出ていました。全く国民性の異なる国から仕入れることで食材の安全性を確保するという意味で、1つの対策といえるでしょう。少なくとも、タイの国民性から考えて中国のような事件は起こりにくいといえますから。

 しかし、タイだから絶対安全というわけではありません。意図的に消費期限切れのものを混ぜたりしなくても、"マイペンライ"という言葉が示すように、多少不良があっても「まあいいか」ということになりかねません。すなわち、どんなチェック体制を築くかは、国民性を踏まえて判断することが大切なのです。これが、冒頭に述べた国民性や宗教などの違いを踏まえた対応が重要ということなのです。

――そういえば、タイでは5月にクーデターが発生しましたね。同国に進出している日本企業への影響はどうだったのでしょうか。

 5月のクーデターが起こったとき、ちょうど私はタイを訪れていました。現地で得た裏情報では、農民や労働者を中心とする赤シャツ派(タクシン元首相の支持者ら)がバンコク近郊で武器弾薬を集めているということでした。軍は、これを放置すると内戦状態になりかねないと判断し、戒厳令を発令するとともに、対立する赤シャツ派と黄シャツ派(野党・民主党を支持する反タクシン派)の幹部を集めて対話を働きかけました。しかし、それでも収拾がつかなかったため、クーデターという形で軍が政権掌握に動いたようです。計画的にステップを踏んで政権を握ったというのが私の印象です。

 クーデターが発生した当初は、治安を維持するために、夜10時から朝5時まで外出を禁止する外出禁止令が出ました。この関係で、一部、24時間操業をしている企業では影響が出ました。しかし、これもすぐに解除されましたので、進出している日系企業において大きな影響はなかったといえます。

 逆に、政治混乱により2億バーツ以上の大型投資案件の認可ができない状態であったものが認可されるようになり、また、予算執行も正常化するなど、各企業の企業活動にとっては、停滞していたものが進みだし良い方向になったといえます。

――ではタイの経済活動は順調なのでしょうか。

 ご指摘のように一番の問題は、タイ国内の景気です。タイはアジアのデトロイトと言われるように自動車産業が経済を牽引しています。タイでは2012年に、以前の日本と同じような車の優遇税制が出され、国内の自動車の販売が急激に伸びました。また、輸出の伸びと共に自動車の生産台数も伸びています。2012、2013年は、2011年と比較すると100万台も生産が伸び、250万台に迫る台数になりました。しかし、2013年の6月以降、生産は大幅に落ち込んでいます。国内の優遇税制の反動ということもありますが、オーストラリア向けなどの輸出が伸び悩んでいるというのも一因です。先日、訪問した自動車関係の生産設備を製造しているあるメーカーは、ほとんど工場が稼働していない状況でした。

 クーデターが発生して軍事政権になったことで、今までの政治対立の中で停滞していた経済政策が動き出し景気は回復しつつあります。しかし、日系各社は今後需要の伸びが期待できるインドネシアへの投資を拡大しています。まだまだインフラ面を含めてタイが自動車の中核であることに変わりはないものの、インドネシアやベトナムなどでの生産拡大に合わせ、今後、タイの役割は、これら周辺国拠点への指導拠点という位置付けが大きくなっていくと思われます。