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◎マツダパワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部主幹の田中伸彦氏。動力源のベース部分であるエンジンの高効率化の開発に力を入れる。
◎マツダパワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部主幹の田中伸彦氏。動力源のベース部分であるエンジンの高効率化の開発に力を入れる。
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 マツダが、高効率エンジンの開発に一層力を入れている。2010年にガソリンエンジン「SKYACTIV(スカイアクティブ)-G」とディーゼルエンジン「同-D」の2つの高効率エンジンを発表。前者では世界一の高圧縮比14、後者では世界一の低圧縮比14と、それまでの常識を越える圧縮比を実現して世間を驚かせた。だが、それ以降もエンジンの高効率化に向けて力を緩めていない。「日経ものづくり」と中部産業連盟が共催するセミナー「国内大手7社が語る 自動車産業の針路2015 ─Accelerate the Future!─」〔2014年11月27日(木)、28日(金)〕に登壇するマツダパワートレイン開発本部パワートレイン技術開発部主幹の田中伸彦氏に、高効率エンジン開発の狙いについて聞いた。(聞き手は近岡 裕=日経ものづくり副編集長)


──今、世界の多くの自動車メーカーが高効率エンジンの開発に力を入れています。しかし、「SKYACTIV」という言葉の認知度の高さは際立っており、「マツダといえば高効率エンジン」という認識が一般にも広がっているようです。マツダは、エンジンの位置づけをどのように考えているのですか。

田中氏::2007年3月に当社は「サステナブルズームズーム宣言」を発表しました。「すべてのお客様に走る歓びと優れた環境・安全性能をお届けする」という宣言です。将来、ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(EV)といった電気デバイスの普及が予想されていました。マツダとしてはまず、クルマのベース技術をより良くしていこうと宣言しました。そのベース技術とは、高効率エンジンやトランスミッション、車体の軽量化などです。

 動力源としてHEVやEVに着目する自動車メーカーがある中で、当社はあえてエンジンを選び、その理想を追求しようと考えました。エンジンは、燃料の熱エネルギーのざっと7割を捨てています。これを改善できれば低燃費への貢献は大きい。その上、エンジンの効率を高めるほど、低燃費を支える電気デバイスを小さくできる利点もあるからです。

 大手と比べて会社の規模がそれほど大きくないマツダには、あれもこれもと手を広げず、注力する技術や車種を絞って全世界に販売していく方法が適しています。HEVやEVはどちらかと言えば一部の先進国が中心で、世界全体を見ればガソリンや軽油を燃料に使う国や地域は圧倒的に多い。そう考えると、高効率エンジンの開発に力を入れることはグローバルで見ても正しい判断だと言えるのではないでしょうか。そもそも、HEVもプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)もエンジンを使うわけですから、エンジンの高効率化はやはり大切です。


──確かに、現時点ではエンジンはクルマの動力源の主流です。高効率エンジンの実現で低燃費においてもHEVに引けを取らないクルマも販売されています。一方で、自動車業界には電動化の波が急速に押し寄せてきているのも事実です。エンジンはいつまで主流なのでしょうか。

田中氏::自動車のパワートレーンに占めるエンジンの割合は、2020年の段階で9割程度、2030年の段階でもまだまだ大多数を占めると考えています。今後の15年でもエンジンがクルマの動力源の主流であり続けるはずです。だからこそ、エンジンの効率を磨き上げる意義が大きいのです。

 ただし、当社は高効率エンジンだけを開発しているのではありません。段階的に電気デバイスも開発しています。現に、当社はアイドリングストップ機構「i-stop」や、減速エネルギー回生システム「i-ELOOP」を既に実用化しています。