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―アプリックスが出しているソリューションは、他社から簡単に真似できそうです。例えば、浄水器のフィルターが切れたらそれに対応したIDを発するというのは、1カ月もあれば開発できてしまいそうです。

 僕らもその辺は気にしていました。まず、競合相手になりそうなのが、BLEのモジュールを作っているメーカーですが、彼らは結局モジュールを売るだけのビジネスで終えてしまいたいので実は競合しません。我々の場合は、むしろアプリケーションソフトウエアであったり、クラウドのソリューションを商売にしたいと思っています。例えば、僕たちのサービスでは鍵をクラウドで管理しています。その鍵を表に出しちゃうと、完全に暗号のスキームが崩れてしまうのでどうしてもクラウドという要素を入れざるを得ないんですね。逆に、手離れが悪いことを嫌うモジュールメーカーはここには手を出してこないだろうと思います。

 価格面でも我々は有利です。モジュールメーカーはモジュールで利益を出さなければいけない。一方、我々にとってはモジュールは単なるサービスの運び屋で、製品販売のレベニューシェア(利益配分)をビジネスの基本に置いているので、価格的に負けることはないと思います。

 次に考えられるのが、BLEモジュールを組み込んだ家電機器を作ってくるようなベンチャー企業ですね。こうした企業は物流やサポートに弱点がある。我々が既存の製品メーカーを対象に商売しているのは、もうすでに物流網を持っていたり、ユーザーサポート体制を持っていたりするからなんですね。とにかく物理的にものを作って全国、全世界に売るって、ものすごく大変なんです。クラウドファンディングで出資を募っている会社を見れば分かるように、出だしはいいのだけど、なかなかビジネス的に成功しない事例がたくさんあります。それは、アイデアで何か面白い製品を作るところまでは今誰でもできるような世界になってきてるんだけど、じゃあそれを米国だったらWal-Martとか、日本だったらホームセンターとか、そういうところで売れるようにまで持っていくというのが難しいからだと思います。

 じゃあ最終的な既存のメーカーが自分で部品を買ってきて作るんじゃないか、っていうのに関してですが、まあ、パナソニックやシャープといった大手の家電メーカーは多分そういうことをするんだろうとは思っています。しかし、我々がビジネスパートナーにしたいと思っている、いわゆる軽家電とかジェネリック家電って呼ばれているメーカーに話を聞くと、アプリの面倒を見るのがいやだとおっしゃいます。扇風機を開発して販売したらその先ユーザーは5年間とか10年間ずっとそのまま使いますよね。ところが、BLEモジュールを入れた瞬間、iOS8が出ました、iOS9が出ました、Android 5.0に対応しなければなりません、次は5.1です、といった具合にアプリをバージョンアップしていかないといけない。しかも、ユーザーによっては古いバージョンのOSのままかもしれない。要するに扇風機を売ったら後はもう壊れるまで待っていればよかったのが、毎年新しいOSへの対応に追われる。下手すると、3カ月に一度のマイナーバージョンアップをずーっとそれを追っかけていかなきゃいけないっていうのは、彼らにとってはとてつもない負担なんですね。

 同じように、小さなベンチャー企業がOSのサポートをし続けられるかっていうと難しいと思うんですよね。本当に、3年なり5年先にクラウドファンディングで立ち上がったスタータップベンチャーが本当にサポートしてくれるの?って話になると、やっぱりそこに不安があります。

 他にも、BLEモジュール搭載の家電を売るには、七面倒臭いことがいっぱいあります。例えば各国の電波規制に応じた認証。(認証機関の)TUVやULに頼むと、最初の申請でだいたい500万円から700万円ぐらいかかるんですよ。いろんなデータを測定をしてレポートを作ったりとかをしなきゃいけないので。その後、各国に申請するのにだいたい1カ国100万円から200万円ぐらいかかるんですね。申請書類を書いてもらう必要があるので。

 うちは社内に電波暗室とか測定用の設備とか全部あるので非常に早く安くできる。だいたい最初が100万円から200万円ぐらいで、1カ国おおよそ20万円ぐらいで認証が取れる。このうち、申請料が10万円ぐらいなんですよ。書類を仕上げるのも自分たちでやります。ユーザー車検みたいなものと思ってもらうと分かりやすいです。ディーラーに車検を頼むとすごい高いんだけど、自分で書類を全部書いて点検して整備して車検場に持っていくと9000円で済んだりするっていう、ほぼあの仕掛けと同じで、我々はそこをずっとやってきてるんで。既に50カ国ぐらいで申請しています。