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トヨタテクニカルディベロップメント 代表取締役副社長 宮田博司氏
トヨタテクニカルディベロップメント 代表取締役副社長 宮田博司氏
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“得意技”へのこだわりは、短期的視野のみ有効

――幅広い知識は必ずしも必要ないという意見もありそうだ。

宮田氏 そういう声もあるだろう。だが、いつ何時、幅広い知識が必要になるときがやってくるか分からない。現在携わっている分野で、「このままでは限界」と痛感することは少なくないはずだ。例えばシステム構成を考えているときに「FPGAを使うべきか、ASICで進めていくか」を検討したとき、それぞれの長所や短所、そして他の設計箇所への影響度合いなどをある程度知っていれば、迅速かつ的確な判断が下せる。

 E検定を受けて、自分の専門領域以外の点数が悪くても、「今、必要としないから点数が悪くても関係ない」と感じる技術者はいるだろう。その気持ちは分からないでもない。だが、先々を考えると、もしくは新しいことを生み出そうとすると、自分の専門領域以外でも基本的な知識を持つという幅の広さを備えてほしい。

 エレクトロニクスの世界は分業化されてきた。特定の技術領域を選択し、そこを極めていくという場合は多い。だが、本当にそれで良いのか。なぜ、自分自身がその技術領域を選択したのかを考える必要がある。

 「たまたまその技術領域を最初に覚えたから、その技術で食っていきます」というのであれば、技術者としてのキャリアをスタートした当初はよいだろう。だが、そのままで本当によいのか。機器設計に求められる技術領域が変わると、自らの選択した技術領域のバリューも当然変わる。特定の技術領域に固執すると、こうした変化に追いついていけなくなってしまう。

 特定の技術領域という“得意技”にこだわることは短期的には有利かもしれない。だが、長期的に考えると、戦略的な視点で自らの技術領域を広げていく方が有利だ。この考え方は、技術者個人だけでなく、企業の開発体制にも通じる。

――日経BP社では技術者向けのセミナーを数多く開催しており、最近は自動車関連の技術者の参加が増えている。

宮田氏 自動車開発に求められる技術の幅が広がってきていることが背景にあるのだろう。

 自動車でマイコンが使われるようになり、そしてC言語でソースコードを書くようになって以来、自動車の電子制御システム開発における電気・電子系技術はあまり大きな変化がなかった。だが近年は、パワーエレクトロニクスについても技術者はよく知らなければならなくなり、C言語ではなくモデルベース開発を活用するようになってきた。マイコンについても、従来のシングルコアではなく、マルチコアを使うケースも想定しなければならない。マイコンの代わりにFPGAを使うことも考えていかねばならない。ICT関連の知識も必要だ。技術者に求められる技術領域が次から次へと増えており、技術者たちは一生懸命に勉強している。