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ジェムコ日本経営 取締役グローバル事業担当 高橋功吉氏
ジェムコ日本経営 取締役グローバル事業担当 高橋功吉氏

 円安による国内回帰の傾向があるとは言え、基本的に日本製造業のグローバル展開は依然として拡大している。最近のグローバル展開の動向と、海外に出向する技術者が増える中でどのような問題が発生しているか、海外出向前にどんなことを理解しておく必要があるかを聞いた。(聞き手は、吉田 勝=日経ものづくり)

――円安の中で、日本への製造拠点の回帰を進めている企業もあります。海外展開の支援をされている立場からは、どのように認識されていますか。

 製造業への就業者数は、リーマンショック前は1170万人でしたが、2012年末で1000万人を切るところまで減少しました。アベノミクス効果もありようやく就業者数は増えてきましたが、それでも2014年末で1027万人と、わずかに戻ったという程度です。ニュースで言われているほど日本に製造拠点が戻ってきていると言える状況ではないと思います。原油価格の低下で貿易収支の赤字幅は縮小していますが、依然赤字は継続したままです。

――海外での生産はまだまだ拡大基調にあるということでしょうか。

 日本の製造業が成長し続けるためには、新興国をはじめとする新たな成長市場に向けた商品やサービスの拡大が欠かせません。もちろん日本からの輸出の拡大もありますが、それはまだ少なく、海外での生産を拡大させる動きは変わっていません。

 私の支援先でも、さらなる生産拡大に向けて東南アジア諸国連合(ASEAN)内に新工場を建設中ですし、中南米をはじめとする新たな国への進出など、海外事業を拡大しています。ただし、各社の製造拠点戦略は大きく変化してきています。典型的な例では、中国への投資は大きく減り、ASEAN地域への投資が大きく拡大しています。

メコン圏が1つの経済圏に

――チャイナ・プラス・ワンが加速したということでしょうか

 中国はご存じのように年率10%以上で人件費が上昇しています。2000年と2014年との最低賃金を比較すると4倍以上の差があります。反日感情や知財問題といった要因もないこともないですが、これだけ人件費が高騰したことで、当然、他の地域に生産拠点を移転する動きが加速しています。

 世界の工場と言われた時代は終わったということです。逆にASEANに対しては、2015年末のASEAN経済共同体(AEC)*発足も見据え、1つの大きな生産エリアと捉えた拠点戦略が進んでいます。中でも、タイ・プラス・ワンは、東西回廊、南北回廊、南部回廊といった道路網の整備が進み、タイ、ラオス、カンボジア、ミャンマー、ベトナムという地続きのメコン圏内で、それぞれの特徴を活かした生産分業が行なわれるようになりつつあります。このように、事業環境の変化に対応するとともに、これらの変化を活かした拠点戦略も大切になってきているということですね。そうなると、それに対応するための人材も必要になります。グローバルでの戦略機能を担える人材、海外拠点経営を担える人材です。

* ASEAN経済共同体(AEC) ASEAN域内での人・もの・サービスの流れを自由化する。欧州連合(EU)のASEAN版ともいうべきものだが、AECは経済活動の自由化に特化している。