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前回は,アナログ技術者にとって重要性が増しているデジタル-アナログ境界技術のうち,デジタルIC間の高速インターコネクト技術について解説しました。今回は,デジタル‐アナログ混載LSIにおけるノイズ結合問題を取り上げます。(連載の目次はこちら

 デジタル系からアナログ系へのノイズ混入の問題は,つかみどころのないお化けのように思っている方も多いようですが,この問題を定量モデル化することを考えてみたいと思います。ここでは,LSI内部においてデジタル回路とアナログ回路が同居している場合のノイズ結合を扱います。現実のノイズ結合問題をある程度の精度で表現可能な全体モデルができれば,同様な次のLSIの設計においては設計段階で混入ノイズ・レベルを予測できるようになるはずです。こうなれば事前に問題を定量的なレベルで把握でき,効果のある対策も設計段階で盛り込めるという画期的なことが実現することになります。しかし学会報告などを見ても,こうした取り組みには範囲が限定的なものが多く,現実のICについてノイズ結合の全体のモデル化による定量予測と,実測結果によるモデルの検証にまで踏み込んだ報告はわずかしかないようです2-1)

 筆者はこのノイズ結合問題に関し,A-D変換器を内蔵したデジ‐アナ混載ICやRF回路を内蔵したデジ‐アナ混載ICについて,定量モデルを作って評価する取り組みの技術指導を行いました。そして問題となる結果に対する原因が分かることにより,確実に改善効果のある対策を見つけることもできました。例えばA-D変換器では混入ノイズを熱雑音レベル以下にでき,その結果入力換算ノイズ・レベルを1/5にまで下げることができました。今回はこれらの経験をふまえ,考え方や取り組み方を中心に解説します。

ノイズ結合問題の基本的な考え方

 SiでできているCMOS LSIの中には,当然お化けなどいるはずもありません。複雑ではあっても電磁気学や回路理論の枠内で理論的に紐解いていけば,必ず因果のつながりが見えてくるはずです。これには全体の系を(1)ノイズ発生源モデル,(2)ノイズ感受モデル,(3)ノイズ伝播路モデル,の三つの部分モデルに分解して考えることが大切です。これは問題を分解して,一度に考えるべき問題の規模を小さくして取り組みやすくすることと,因果の流れを常に意識して論理の飛躍を排除する効果があります。大きくて複雑な問題をそのまま扱えば,どうしてもこの飛躍(あてずっぽう)に走りがちです。ですから案外,お化けは手っ取り早く走り去りたいと思うエンジニアの心の内にいると言えるのかもしれません。

 もう一つ大切なことは,三つの部分モデルをつなげて現実の結果と突き合わせることでモデルの妥当性を検証することです。全体をつなげた検証を行わずに,部分モデルだけに取り組んでいても,結果という重みのある事実からのフィードバックがかかりませんし,独り善がりな結論を導きかねない危険があります。

 ノイズ・レベルの見積もり精度としては,まず±10dB以内くらいに追い込むことを目標とします。10dB(3倍)違うというのは一見大きいように思われるかもしれませんが,今まで全くノイズ・レベルが予測できなかったことから考えると,因果関係の予測という点で十分役に立つはずです。ノイズ結合問題ではこの精度を上げることに注目し過ぎると,手に負えない複雑さの前で挫折しがちとなりますので注意が必要です。小骨はさておいて骨格をまず見ようというわけです。

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