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前回は,オペアンプを単電源で使用する場合に,出力電圧が不足する問題について取り上げました。今回は,雑音が問題になった事例について,アナログICの代表例であるオペアンプを例にとって検討します。(連載の目次はこちら

よく発生する問題

 アナログの設計では,雑音がよく問題になります。雑音の発生要因はたくさんあり,厳密に推定するのは容易ではありません。教科書から得た知識や経験に基づいて設計することになりますが,「この回路の雑音はどうだったかな」と調べても,参考文献が見つからないことがよくあります。そんなときに,経験だけで設計して失敗することが少なくありません。ここでは,アナログICの代表例であるオペアンプを例に,雑音が問題になった事例を検討したいと思います。

 直流増幅回路や低周波増幅回路のコスト削減策として,オペアンプ1個で利得を高くする方法があります。ある時,図4-1のようなT型帰還を使用した高利得の計測用増幅回路注1)について,利得は約1万倍と十分だが雑音が大きくなってしまった,という相談を受けました。

図4-1 相談された計測用の高利得反転増幅回路

注1)この増幅回路は,C1によって周波数帯域を1.8Hz程度に制限しています。C1によって増幅回路はR2f(図2(b)中の抵抗)とC1の低域通過フィルタ(1次遅れ回路)として動作するため,周波数帯域が制限されます。今回の場合は,低域遮断周波数=1/2πC1R2f≒1.8から,周波数帯域が0~1.8Hz程度になります。直流~極低周波信号の増幅を目的に設計した回路と思われます。

原因と対策

 高利得の反転増幅回路を構成するときは,図4-2の二つの方法がしばしば利用されます。図4-2(a)では,利得を高めるためにR2に40MΩの高抵抗を使用しています。図4-2(b)はT型帰還を使用しており,入手性の良い低い抵抗で高利得を実現できます。例えば,40MΩ程度の抵抗はリード・タイプなら入手可能だと思われますが,チップ部品ではほとんど入手できないでしょう。図4-2(b)で利用した20kΩのチップ抵抗なら,容易に入手できます。

図4-2 出力雑音電圧の計算例
(a)の一般的な反転増幅器では,利得を稼ぐためにR2に40MΩの高抵抗を使用します。 (b)のT型帰還を使用した増幅回路なら,同じ利得を得るときに一般的な抵抗を使用できます。

 ところが今回,このT型帰還回路のために雑音が大きくなってしまいました。T型帰還回路は,一般的なオペアンプの教科書にも載っている有名な回路です。しかし,特徴をよく理解していないと,回路から発生する雑音が「思いのほか大きい」と驚いてしまうことになります。

 一般的に,抵抗内部では電子の熱擾乱によって熱雑音が発生します。熱雑音電圧V (V)は,一般に以下の式で表されます。

V = (4kTRB )1/2

ここで,kはボルツマン定数(1.38×10-23J/K),T は絶対温度(K),R は抵抗値(Ω),B は等価雑音帯域幅(Hz)です。この式から分かるように,抵抗が大きいと熱雑音は大きくなります。

†等価雑音帯域幅=理想フィルタ(ブリック・ウォール・フィルタ)で帯域制限をしたときと雑音電力が等しくなる帯域幅です。

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