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受信系低雑音増幅から復調,誤り訂正まで

 次に受信系について解説します。アンテナで受信した電磁波は,以下の経路をたどってデジタル信号に変換されます。

(a)高周波フィルタ

 使用周波数帯以外に混ざってくる干渉波を取り除きます。送信の場合と同じく急峻に干渉を落とすフィルタは難しいため,隣接する周波数帯の干渉成分については後段のローパス・フィルタやデジタル・フィルタによって除去します。

(b)低雑音増幅器

 LNA(low noise amplifier)と呼ばれる増幅器です。雑音を低く抑えたまま,信号成分を増幅できます。

(c)直交復調器

 受信信号に搬送波と同じ周波数の信号を乗算することで,ベースバンド信号に変換します。直交変調と同じく,VCOとPLLにより搬送波周波数を生成します。

(d)ローパス・フィルタ(受信)

 直交復調器によって生じたベースバンド帯域外の不要な信号や,隣接する周波数帯に存在する干渉成分を除去します。

(e)A-D変換器

 アナログ信号をデジタル信号に変換します。近年では高速伝送の需要から,高い周波数で動作するA-D変換器の開発が盛んになっていす。また,高度な変調方式にも対応するため,変換後の出力信号のビット幅も大きくする必要があります。

(f)デジタル・フィルタ(受信)

 上記のローパス・フィルタと同じ役割を果たします。送信側のフィルタ同様,回路規模が許せば急峻な遮断周波数特性を持たせられるため,隣接周波数帯の干渉を除去することができます。

(g)同期検出器

 受信信号のタイミングを検出します。シンボル(1回の変調で送信するデータ)の切れ目や,フレームの切れ目などを検出し,正しいタイミングで処理を開始できるようにします。概して時間的な制約が強いため,高速動作が要求されます。

(h)伝搬路推定器

 無線伝搬路を推定します。受信信号には,マルチパスの影響により振幅の歪みや位相の回転が生じているため,これらの歪みや回転を検出します。推定に用いられる信号は概して受信側で既知であるので,伝搬路の影響だけを推定することができます。

(i)等化器

 伝搬路推定器から得た伝搬路の情報を基に,受信信号から伝搬路の影響を取り除きます。

(j)復調器

 図3に示されるコンスタレーションから,送信された信号点を検出します。実際にはその場で信号点を検出せず,後段の誤り訂正復号器への入力として,各信号点に対する「確からしさ」の値を出力することがほとんどです。

(k)誤り訂正復号器

 送信側で誤り訂正符号化されているため,それに対応する復号を行います。この操作によって,誤り訂正符号化を行わない場合に比べて大幅にビット誤り率を低減できます。例えばターボ符号やLDPC符号などは,前述のパンクチャリングを含めた符号化率がある程度大きくても,強力な誤り訂正能力を持っています。ただし,一般的には訂正能力が強い符号ほど,この誤り訂正回路が複雑になります。

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 本解説では,一般的な無線機の構成を示して信号処理の流れを説明してきました。これらの構成はシステムによっても大きく異なります。また,今後ソフトウエア無線機などが出てきた場合には,これらの多くの処理がプロセサで行われることになるため,処理の区切りが分かりにくくなってきます。しかし基本的な信号の流れは変わりません。本解説がワイヤレス通信システムを理解する上での手助けになれば幸いです。