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連載の第5回と第6回では,微細加工プロセスの要であるリソグラフィ技術を取り上げる。リソグラフィは,素子の位置と寸法を決める基盤技術であり,ここが揺らぐと,設計通りの回路性能は望めなくなる。これまでは主に光源波長を短くして高解像度化を達成してきた。0.13μm以降は波長を変えずに光学系や照明,マスク,回路レイアウトなど多くの技術を総合的に改良している。

 リソグラフィ技術の性能向上には,露光装置だけではなく,照明やマスク,回路レイアウトなどを総合的に最適化することが欠かせなくなっている(図1)。現在,ArFエキシマ・レーザー露光技術は,ハーフピッチ45nmの線幅/線間隔パターンを解像できるところまで進化した。これは,単純に装置を改良しただけではなく,複数の技術を組み合わせた成果である。

図1●装置,照明,マスクを総合的に最適化
露光装置だけではなく,照明やマスクを最適化することによって高解像度化が可能になる。また,ウエーハ上の露光領域ごとに露光量を変化させることで寸法バラつきを補正できる1)。著者のデータ。
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回折光をできるだけ取り込む

 露光装置の原理は,マスク上の回路パターンを回折格子に見立てると分かりやすい(図2)。この回折格子に円形の光を当て,回折光をレンズで集光し,ウエーハ上に画像を形成するのが露光装置といえる。ウエーハ上に形成された画像の解像度は,レンズで集光できる回折光の数で決まる。多くの回折光を集光できると,それだけ画像のコントラストを高められるからである。コントラストが十分に高ければ,隣接するパターンを明確に区別でき,解像度が高まる。逆にコントラストが低いと,パターンを明確に区別できず,解像できなくなる。

図2●回折光の取り込みでコントラストが決まる
コントラストは,光学系が取り込めた回折光の数で決まる。小さなピッチでは高次の回折光が光学系の外側へ回折して取り込めないため,コントラストが低下する。著者のデータ。
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 何本の回折光をレンズに入れられるかは,一般に回折格子のピッチで決まり,これが狭いほど取り込める回折光は少なくなる。また,光学系の直径が大きければ,回折角の大きい高次の回折光まで取り込める。これは,マスクに垂直に入射した光の回折角φが,マスク上の回折格子のピッチPが狭いほど大きくなることによる。具体的には,sinφ=±mλ/Pの関係になる。ここで,mは回折次数,λは光の波長である。

 これを図で示すと,各次数の回折光はレンズ上では円形になる(図2)。回折格子のピッチが大きい時は0次光と±1次光が大きく重なって光学系に取り込まれるので,コントラストは高くなる。一方,ピッチが小さくなると,0次光と±1次光との重なりは減少し,±1次光がレンズに取り込まれなくなる。

 このような光学系の解像度を初めて定義した人物はRayleigh氏2)であり,その関係はRayleighの式として知られている。リソグラフィの分野では,Burn Lin氏3)が提唱したRayleighの式の変形版を使うことが多い。すなわち,解像度Rは波長λに比例し,開口数NAに逆比例するという関係式である。ここで,NAは光学系の大きさを示す値である。比例定数にはプロセスによって決まる値であるk1を使う。図2(b)のようにk1が0.25付近になると,±1次光がレンズにほとんど取り込まれなくなり,解像限界に達する。