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第5回に続き、リソグラフィ技術を見ていく。今回は、高解像度化を進めるための取り組みについて、液浸露光や2重露光といった最新の話題を含めて紹介する。

液浸露光でNAを1.2に拡大

 ここへ来て注目されている新しい技術としては,液浸露光9)が挙げられる(図11)。これはNAを大きくし,多くの次数の回折光を取り込むことによって解像度を高める技術である。Rayleighの式では,NAはn・sinθで表される。数年前まで,すべての光学系は屈折率がほぼ1である空気中で動作していたので,NAは理論上1以下に制限され,実用上のNAは約0.93が限界だった。これに対し,液浸液として屈折率1.437の水を使えば,NAを1以上に高められることは知られていた。ここへ来て,水中での露光が,実際の量産装置でも可能なことが示され,注目を集めている。

図11●液浸露光の原理
液浸露光では,レンズとウエーハの間に水を満たすことにより,NAを1以上まで拡張できる。著者のデータ。
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 われわれはこの技術を製品化しており,1.2のNAを達成している10)。NAの拡大によって,NAND型フラッシュ・メモリーなどハーフピッチ45nmの製造に必要な焦点深度と露光余裕度を実現している(図12)。42nmのハーフピッチでも広いフォーカス範囲を確保できることを実証した。

図12●NA1.2は45nmハーフピッチを解像可能

NAを0.93から1.2まで変化させた時のArF露光における焦点深度と解像度をシミュレーションから示した。著者のデータ。
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 液浸露光の実現性と課題が明らかになったのは2003年である。NA0.75のドライArF露光装置のレンズおよびウエーハ・ステージを改造し,液浸による初のスキャン・イメージを形成した11)。この結果,最下部のレンズとウエーハの間に水を満たすことで,空気中での露光に比べて焦点深度を大幅に改善できることが明らかになった。ただし,この段階では従来と同型のレンズを使い,NAを同一としたため,解像度はドライ露光と同等だった。

 高NAの光学系を開発するためには,光学系の寸法と重量を削減することが大きな課題になる。これまで多くのスキャン露光装置の光学系は屈折レンズを採用しており,素材としては石英ガラスまたはCaF2のみが使われていた。このまま高NA化すると,投影光学系が複雑になり,高コストになる点が課題だった。そこで反射ミラーと屈折レンズを使ったインライン型の反射屈折レンズを開発した。これにより,NAを15%向上しながらガラス素材は40%削減することが可能になった。この光学系は現在までに6台以上製造され,いずれも波面収差は5mλ未満と良好な値を示している。