歩留まり向上に欠かせない洗浄技術――。薬液の種類やそれらの混合比,洗浄後の乾燥手法などに新たな工夫を施し,低ダメージ化や新材料への対応を進めることがカギとなってきた。新たなアプリケーションの登場によって,従来のバッチ式処理に加えて枚様式処理の導入も加速している。
微細化で技術課題が増大
LSIの微細化に伴い,ここヘ来て洗浄には新たな技術課題が浮上している(図9,図10)。それらの課題は四つに大別できる。( i )物理的ダメージの抑制,( ii )エッチングによるSiO2膜の欠損(膜減り)の抑制,( iii )アスペクト比の大きい構造への対応,( iv )新材料への対応である。

( i )物理的ダメージの抑制は,パーティクル除去に利用する超音波洗浄の課題である。設計ルールの小さいLSIにおける線幅の細いパターンは,超音波によるわずかな力が加わっただけで破壊されやすい(図11)。とりわけ,加工寸法の小さいトランジスタのゲート部で問題になる。この問題に対処するには,超音波洗浄の低ダメージ化や,超音波洗浄に代わる洗浄手法が必要である。
( ii )膜減りの抑制は,パーティクル除去に利用するAPM洗浄の課題である。膜減りとは,Siウエーハ表面の酸化とエッチングが過剰に進行して,ウエーハ表面を削り取ってしまう現象である。この膜減りは,トランジスタのソース/ドレイン領域やゲート側壁のスペーサ層などで問題になる。とりわけ,トランジスタのソース/ドレイン領域に形成する極浅接合(USJ:ultra shallow junction)の膜減りはトランジスタの性能低下の原因となる。イオン打ち込みで多量に添加した不純物原子の一部が削り取られてしまうことによる。膜減りに対処するには,NH4OHとH2O2の混合比や薬液の温度を最適化するなどの工夫が必要になる。