PR

連載の第18回と第19回では,トランジスタのドレインと基板の間の寄生容量を減らしてLSIの性能を高めるSOI(silicon on insulator)基板技術を取り上げる。SOI基板技術は,微細化に頼らずにLSIの性能を向上させる「テクノロジ・ブースタ」の一種であり,すでに高速プロセサや低電力LSIなどで実用化されている。LSIのさらなる性能向上に向けて,ここに来て基板表面のSi層(SOI層)を50~10nm厚まで薄くしたり,ひずみSiやGeチャネルとSOIを組み合わせる技術の開発が活発化している。

 LSIの性能を持続的に向上させるために,微細化によらずに性能を高める「テクノロジ・ブースタ」の活用が欠かせなくなってきた。数多く提案されているテクノロジ・ブースタの中で,いち早く1990年代後半に実用化され,普及が進んでいるのがSOI(silicon on insulator)基板技術である(図1)。この技術では,トランジスタを微細化することなく,LSIの動作を高速化したり低電力化したりすることができる。すでに高速プロセサや低電力LSIに導入されており,ここに来てMEMS(micro electro mechanical systems)やRF(無線周波)回路といった分野へも応用が広がり始めている(図2)。

図1●微細化によらずLSIを高速化/低電力化する
トランジスタのドレインと基板を絶縁分離して駆動能力を高めるために,Si基板をSOI構造にする。SOI層を薄くして完全に空乏化することで,さらにトランジスタ性能を高められる。本誌が作成。
[画像のクリックで拡大表示]
図2●多方面に広がるSOI基板技術の応用
実用化で先行した高速プロセサや低電力LSI以外に,SOI基板技術の応用が多方面に広がり始めている。例えば,MEMSやRF素子への応用が可能である。Soitec Asiaのデータ。
[画像のクリックで拡大表示]

2通りの量産手法が確立

 SOI基板技術は,トランジスタのドレインと基板の間の寄生容量を低減することによって,駆動能力を高める。Si基板の構造の工夫によって,これを実現する点に特徴がある。具体的には,Si基板表面の単結晶Si層の直下に厚いSiO2(buried oxide:BOX)層を設けて,単結晶Si層(SOI層)と基板を絶縁分離する。

 ただし,SOI構造の基板を作製することは容易ではない。BOX層の上に高品質のSi薄膜を形成することが難しいためである。後に述べるさまざまな改良を重ねた結果,現在,二つの手法がSOI基板の量産に適用されている。(1)Siウエーハに酸素イオン(O)を注入してBOX層を形成する「SIMOX(Separation by Implanted Oxygen)法」,(2)表面にSiO2層を備えたウエーハとSiウエーハを張り合わせる「張り合わせ法」である。このうち,現状では市場に供給されるSOI基板の約90%が張り合わせ法で製造されており,残り約10%がSIMOX法で製造されている。