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 並列転送方式で動作する回路の問題の1つにSSN(Simultaneous Switching Noise)として知られる同時スイッチングノイズがある。同時スイッチングノイズとは多くの信号線で論理値が同時に変化したときに、他の信号線に誘発される雑音のことだ。グランドが揺れるため、グランドバウンスとも呼ばれる。論理値が変化しない信号線に顕著に現れる(図5-1)。ノイズマージンが低下したり、極端な場合にはスレッショルドレベルを超えたりすることもある。またジッタの原因にもなる。

 図5-1 同時スイッチングノイズ
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 同時スイッチングノイズは何故発生するのか?論理回路で論理状態が変化するということは、回路内の電圧レベルが一定以上になったり以下になったりすることだ。言い換えれば、回路中にある配線や相手側入力回路などの容量性負荷(キャパシタンス)の両端電位が変化することである。これらの容量へのドライバーからの電荷の移動、ドライバーへの充放電流、あるいはグランドに存在する誘電性負荷(インダクタンス)などにより同時スイッチングノイズは引き起こされる。

式を交えて説明しよう(図5-2)。

図5-2 同時スイッチングノイズの原理
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容量性負荷Cでは式(1)のように充電されている電荷Qにより電位VCが決定する。つまり論理の変化は容量性負荷Cに対し電荷Qの充放電を伴う。

容量性負荷Cに対する充放電電流ICは式②のように電荷Qの時間変化に比例する。

つまり容量性負荷Cには電荷Qが充放電される時だけ電流が流れる。
①と②より、

まとめると、容量性負荷に流れる電流は

1.容量が同じならば電圧変化が大きいほど、つまり高速+振幅が大きいほど
2.電圧変化が同じならば容量が大きいほど、つまり負荷が大きいほど大きくなる。