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コア・コンピタンスかどうかは4つの評価視点で判断

 まず、Value(経済価値)です。このステップでは、その強みが市場で経済的価値があるものとして「顧客をはじめとしたステークホルダーに認識されているか否か」で評価します。経済的価値とは難しい表現ですが、外部環境の機会を活かすことに役立つ、あるいは脅威を小さくすることに役立つものであれば「経済価値がある」と評価してよいでしょう。ちなみに、SWOT分析で「強み」と判断している時点で、その強みは多かれ少なかれ「経済価値」を持っていると考えられますから、このステップで「×」が付くものは、そもそも強みと判断するには至らないものと言えますね。

 次に、Rarity(希少性)です。このステップでは、その強みが「市場で希少性を発揮しているか否か」で評価をします。例えばですが、程度の差はあるにせよ、同じような強みをもっている会社が何社もあったら、それはお客様から見れば「乗り換え自由なもの」となってしまいますよね。なので、このステップで「×」が付くものは、強みだけど「程度問題」という感じでしょうか。

 Imitability(模倣困難性)のステップでは、その強みが「競合他社が簡単に真似できるか否か」で評価をします。もしその強みが「実はその気になれば他社でも3カ月で獲得できるもの」だとしたら、その強みの有効期限は「たったの3カ月」ということです。なので、このステップで「×」が付くものは、その強みの優位性は一時的なものであるという評価になるわけです。

事業ドメインはコア・コンピタンスが発揮できる領域とする

 そして最後のOrganization(組織)です。このステップでは、その強みが「市場で十分に有効活用できるような仕組み(組織体制)が備わっているか否か」で評価をします。注目して頂きたいのは、これまでの「経済価値・希少性・模倣困難性」が、強みの「優位性」そのものを評価する視点であったのに対し、4つめの「組織」だけは優位性を活用できるか否かという「体制面」を評価する視点であるということです。優位性の高い強みが組織的にしっかりと発揮できるものでなければ、コア・コンピタンスとは言えないということですね。つまり、このステップで「×」が付くものは、その強みの優位性は持続的ではあるものの、組織としては有効活用できる状態ではないという判断になるわけです。

 これら4つの評価視点ですべてに「○」が付けば、それは「競争に勝つための核となる能力=コア・コンピタンス」と判断できるのです。

 エンジニアがマーケティングセンスを獲得する上で、この「コア・コンピタンス」の考え方は、とても重要なものになります。とくに、「事業ドメイン」を考える上では必須です。事業ドメインとは「事業を展開する領域」のことを言います。事業ドメインを決める理由は、持続的な競争優位を構築することにあります。つまり、この事業ドメインは「コア・コンピタンスが発揮できる領域」でなければ意味が無いのです。

 エンジニアの皆さんの日々の活動で、事業ドメインを決めることはまずあり得ませんが、新規事業などのリーダーになれば「新規事業のドメインを決める」ということは必要になります。事業ドメインについては次回詳しく説明しますので、まずはSWOT分析とVRIO分析の考え方をしっかり理解しておいて下さいね。

酒井 勇貴(さかい ゆうき)
クリエイティブパーソンズ 代表パートナー
長岡技術科学大学大学院工学研究科修了。中小企業診断士/経営学修士。老舗の産業資材メーカーで新製品・生産技術開発に携わった後、独立系ベンチャーキャピタルグループにて投資支援先の新商品企画・新規事業立ち上げのハンズオン支援を行う。現在は、新規事業企画・Webマーケティング戦略立案を中心としたハンズオン支援のほか、公的支援機関のインキュベーションマネージャーとして創業支援も行っている。売上アップやマネジメントの原理原則をわかりやすく解説した経営セミナーにも定評がある。主な共著書に『社長はデータをこう活かせ!』がある。日経テクノロジーオンラインで『エンジニアのための会計センス養成講座』などを執筆。