PR

 同センターはこれまでにも、大規模な省エネルギー活動にまい進してきた。その中心を担ったのが、省エネ性能に優れた設備の導入である。特に発電設備においては、2013年までにメガソーラー(大規模太陽光発電)やコージェネレーション設備、さらには蓄電用に出力1万2000kWのNaS電池システムを配備。これらを駆使して同センター内で可能な限りエネルギーの運用を「自己完結」させることで、夏季のピーク時に電力会社から購入する電力量を一定に抑えている。いわゆる「ピークシフト」の実施である。

 しかし、こうした取り組みには限界がある。省エネ効果は設備の性能によって上限がある上、大きな省エネ効果を生む設備は限られるからだ。大切なことは、設備を利用する技術者が省エネを強く意識することだ。そこで同センターが着目したのがSNSだった。そもそもどの設備がどれだけの電力を消費しているかを正確に把握していなければ利用状況をSNSに掲載できないが、幸い同センターにはそのための仕組みが既にあった。

4000個のメーターを装備

 実は、四輪R&Dセンターの設備管理課は2013年までに、上述のピークシフトの準備を進める一方で、至る所にスマートメーターを設置する作業を進めていた(図2)。その数、なんと4000個。省エネ活動に必要なデータを漏れなく集められるように、同課は研究所全体の電気系統図はもちろん、それぞれの研究棟内にある設備を構成する装置の構成図まで作った。「やるとなったらトコトン」(同課の井坂裕治氏)が本田技術研究所のモットーという。その結果、オフィスの照明から自動車関連の各種実験装置に至るまで、同センター内のほぼ全ての設備の電力使用状況を把握できる仕組みができた。

図2●スマートメーターを設置した研究所の分電盤
四輪R&Dセンター内にある設備の細かな運用状況を把握できるように、スマートメーター4000個を設置した。
[画像のクリックで拡大表示]

 一般的な省エネ活動ではとかく、設備を担当する部署ばかりが活動に躍起になり、当の利用者は活動に関心が薄い場合が多い。しかし、同センターの場合は違った。実際、技術者が自発的にプロジェクトチームをつくり、SNSの構築から運用までを買って出たという。

 プロジェクトチームが中心となって考案したSNSは、大きく4つの要素で構成される(図3)。[1]トップページ、[2]室課ページ、[3]設備ページ、[4]削減提案ページ、である。

図3●技術者が中心となって作成した社内SNS
4つの要素から構成される。削減提案に対してはコメントや「いいね」を付けられる。
[画像のクリックで拡大表示]

 トップページの役割は、閲覧する技術者のモチベーションの喚起にある。室課ごとの目標達成状況や削減提案リストなどに加え、上部に掲示するバナーには、環境にまつわる豆知識を表示。閲覧者が飽きないようにと、ログインするたびにバナーの種類を変更する工夫も加えた。