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 従来のモジュールは、強度を確保するためセラミックス基板が用いられているが、新製法の素子はガラスに覆われており割れにくいため、基板の自由度も広がる。実際、図1の試作品は、ポリイミド製の3層フレキシブル基板上にチップマウンタを使って素子を実装している。

 従来の一般的なπ型熱電変換モジュールの素子は、帯域溶融法*1によって作製したBi-Te系結晶材料のインゴットを、さいの目に切り出して造る。ところが、この方法は素子を小さくするのに限界がある。Bi-Te系の材料はへき開性が高く小さく切り出すのが難しいからだ。その上、切り出しの際に3回のスライスが必要となることから材料ロスが多く歩留まりが悪い。「75%が切り粉になってしまう」(前嶋氏)という。

*1 帯域溶融法 インゴットの一部を帯状に加熱して溶融させ、その溶融部を移動させていくことで不純物を溶融部に集めて純度の高い材料を得る方法。

 新製法は、素子が小さい上に、ガラス管の軸と直交する方向に1回スライスするだけで素子が造れることから、材料ロスが少ない。しかも、ガラスで保護されているのでへき開性のあるBi-Te系材料が割れにくくなり、モジュール自体の厚み方向の強度が高まるというメリットがあるのだ。

 材料組成も工夫した。より大きな起電力が得られるように第一原理計算*2を適用したシミュレーションによって最適なキャリア密度や同密度の制御因子を解明。それを基に使用温度域に合わせて材料を設計した。

*2 第一原理計算 電子や原子核同士、電子と原子核間の相互作用など、量子力学に基づいて物質の物性などを計算する手法。