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激戦区を避ける

 いくら顧客から要請があり、関税や人件費が低いからといっても、日本からはるかに遠いメキシコに、日本の中小企業が新工場を設けるというのはリスクが大きいように思える。だが、樋口氏は「むしろ、チャンス」と自信をみせる。理由は、競合が少ないからだという。

 樋口氏の考えはこうだ。日本市場の自動車の販売が縮減に向かう中、日本の部品加工メーカーの多くは、顧客から「選択と集中」の名の下に展開されるサプライヤーの絞り込み策の影響を受けている。要は、競争力の高いメーカーだけが、取引先に選ばれるという仕組みだ。そして、これに耐えた力のある日本メーカーが、日本から比較的近い東南アジアを中心に活路を求め、工場を建てるケースが多い。こうした状況から、樋口氏は「東南アジアはむしろ、日本以上に激戦区」と感じているという。

 ところが、太平洋を越えてメキシコに渡ると、「日本の部品加工メーカーの進出は少なく、東南アジアと比べると競争が激しくない。それでいて、成長著しい南米市場はもちろん、巨大な米国市場の需要も期待できる」(同氏)。

 樋口氏の自信を支えるのは、適切な市場を見つけるこうした“選球眼”に加えて、もう1つある。樋口製作所のコア技術である、プレス機による深絞り加工技術だ。