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クルマの軽量化に貢献

 無線技術のクルマへの応用も期待されている。車内の随所に搭載している電子制御ユニット(ECU)と、エンジン、ブレーキ、ワイパー、窓ガラス、ライトなどと接続するケーブル(ワイヤーハーネス)を削減できるからだ。ワイヤーハーネスの増加による重量増を抑えられる。1台のクルマに使用されるワイヤーハーネスの重量は中型車で20kg前後、大型車になると40kg以上もある。

 多くの消費者が燃費効率の高いクルマを求めることもあって、車体の軽量化はメーカーにとって最優先課題となっている。こうしたメーカーのニーズを受けて、車載ネットワークの一部を無線化してワイヤーハーネスを減らす研究が進んでいる。例えば、東北大学 電気通信研究所 教授の加藤修三氏の研究グループは、ワイヤーハーネスの代わりに金属被覆した樹脂製のホース(電波ホース)を使う技術を研究中だ。中空のホースを無線の伝送路にするアイデアである。ワイヤーハーネスでは不可欠だった金属線を除去して中空にできるため、配線を軽量化できる。

耐振動性も高まる

 一方、慶應大学の黒田氏のグループは、電磁界結合を用いてワイヤーハーネスを減らす技術の研究を進めている。2014年2月に開催された半導体関連の国際学会「2014 IEEE international Solid-State Circuits Conference(ISSCC)」で発表した。ワイヤーハーネスにクリップ状のコネクターを挟んで、ECUを車載ネットワークに電気的には非接触で接続する技術だ(図6)。各ECUを直列につなぐことができ、ワイヤーハーネスを短くすることが可能という。既存の車載ネットワークでは、ECUの接続に機械式のコネクターが使用されているため、振動でコネクターの接続が緩んだり抜けたりするトラブルがある。黒田氏らの技術は、コネクターの端子がワイヤーハーネスに接触していなくても通信が可能なので、このような問題も起こらないという。

図6 車載ネットワークを無線技術で直列接続に
図6 車載ネットワークを無線技術で直列接続に
慶應大学の黒田研究室が研究する車載向けの無線化技術。電子制御ユニット(ECU)の直列接続が可能になるのでLANケーブルを短くできる他、振動によるコネクター抜けなどのトラブルも減る。(図:慶應大学 黒田研究室がISSCC 2014で発表した研究論文(講演番号30.6)を基に本誌が作成)
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医療機器への応用も

 この他、機器内の無線化技術は医療機器の分野でも活用が期待されている。例えば、内視鏡など頻繁に曲げて使う機器の場合、繰り返し使い続けるとコネクターやケーブルといった着脱部/可動部の接続信頼性が低下するリスクがある。同様のリスクは前述のように民生機器にもあるが、信頼性が求められる医療機器にとっては、より深刻な問題だ。こうした部分を無線化して機器の信頼性を高めることが検討されている。「既に幾つかの医療機器メーカーから引き合いが来ている」(機器内無線技術を開発中のある部品メーカー)という。

 機器間・機器内の接続の無線化は、「従来製品の改良」だけではなく、将来的に電子機器の実装や製品企画にもインパクトを与える可能性がある。電気的な接続を意識しなくてよいなら、筐体内での部品配置の自由度は高まる。部品の固定方法においては、電気的接続を伴わない粘着テープや接着剤の適用範囲が広がるかもしれない。また、機器の外付けアダプターからコネクターを省くことができる。接続部をなくせるため信頼性を高められ、防水や防塵にもしやすくなる。

 米Google社が2014年2月に発表したプロジェクト「Project Ara」で示したような製品にも有効だ。これは、複数の機能モジュールを消費者が自身の好みで組み上げられるようにしてスマートフォンをカスタマイズできるようにしたもの。各機能モジュールの電気配線部を露出させることがない。