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 「Oculus Rift」というヘッドマウントディスプレー(HMD)をご存じだろうか? 米国のベンチャー企業Oculus VR社が開発した、仮想現実感(VR)ゲーム用に特化したHMDである。2013年春に始まった開発キットの出荷は、既に全世界で5万台を超えたという。3次元コンピューターグラフィックス(3DCG)を駆使する世界中のゲーム開発者が、熱い視線を注ぐ存在だ。

 2014年1月に開催した家電機器の展示会「2014 International CES」では、最新の試作機「Crystal Cove(開発コード名)」が登場した(図1)。米国のハイテク関連ニュースサイトEngadgetが、CESの公式アワードである「Best of CES」の「Best of the Best」に選ぶなど、10以上の賞を受賞している。

図1 最新の試作機「Crystal Cove」
家電関連の展示会「2014 International CES」で披露された。右は筆者が装着したところ。

 Oculus Riftは、実はまだ普通の消費者が買える製品ではない。製品の発売時期も未定である。それでも開発者の注目を集めるのは、開発キットの価格が300米ドルと非常に安価であることが一因だろう。機能の絞り込みや、ソフトウエアの工夫、部品の流用などによって低価格を実現したとみられる。例えば、液晶パネルの映像をレンズで拡大したときに生じる歪みを光学的に補正する代わりに、GPU上で動作するソフトウエア(シェーダー)であらかじめ歪みを考慮した画像を描画することで補正している1)

 人気が高いもう一つの理由が、実際に利用したときに得られる、仮想世界への没入感の高さだ。筆者もこの点に感銘を受けた一人である。その思いが高じてOculus Riftを日本でも普及させようと、ゲーム開発者を巻き込んだイベント「Oculus Game Jam」の開催に携わるようになったほどだ2)

 これだけ高い完成度を実現できたのは、開発者自身が欲しい物を追求して作り上げた結果だろう。Oculus Riftは、Oculus VR社の創業者であるPalmer Luckey氏が試作したHMDが原型である。当初のプロトタイプに将来性を感じ、同氏の発想に賛同した人々が、資金を拠出し、開発に協力したことで、現在の試作機が出来上がった。この試作機は世界中にばらまかれて開発者のエコシステムを形成する一方で、試作機への反響は将来登場する製品の完成度向上に役立っている。

 Luckey氏は現在、若干21歳の若者である。彼のアイデアを現実の開発プロジェクトに結びつけたのが、いわゆるクラウドファンディングの仕組みだ。本稿では、クラウドファンディングを利用して個人の発想を製品化につなげる開発の進め方を解説するとともに、日本企業のものづくりに対する影響を考察する。