ドイツBMW社の電気自動車「i3」は衆目が一致する量産車である。しかし、価格が約500万円であり、大衆車とはいえない。大衆車に使うためには、さらなるコスト削減が不可欠だ。そこで俄然注目を集めているのが、樹脂成分にポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)などの熱可塑性樹脂を使う熱可塑性CFRPである。
熱硬化性CFRPは、強度や剛性に優れるため軽量化効果が高く、自動車の骨格や外板に使うのに十分な寸法精度を備えている。しかし、量産性が低く、大量生産ではコスト面で不利になる。成形工程で樹脂を硬化(高分子化)させるために成形サイクルが長くなるからだ。自動車工場のタクトタイムは1分程度。熱硬化性CFRPの成形サイクルが仮に10分だとすると、1分のタクトタイムに合わせるには10台の成形機が必要になる。
一方、熱可塑性樹脂は最初から高分子になっている。それを溶かして冷やすだけなので、1分以内の成形も可能だ。熱可塑性CFRPの成形に使う大型のプレス機や射出成型機は、熱硬化性CFRPの成形に使うRTM法の成形機に比べて高額だが、生産性が高いために量産規模が大きければ大きいほど、コスト面で優位になる。
この熱可塑性CFRPで突出した動きをしているのが帝人だ。