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書:山田思苑
写真:堀 勝志古

 人間はどうしたら「技」を身につけ、「知恵」を出せるようになるのか。僕は1978年にPEC産業教育センター(現PEC)を創業してから、ムダとりを自身の勤務先で実践できるリーダーを1万人以上育ててきた。しかし、どうしたら高い志を持てる人を育てられるかは、永遠の課題として今も僕の頭を悩ませている。

 どうやら僕はいつも、人間以外の動物と自分自身を比較しながら人間というものを見つめてきたようだ。なぜ生きるのか、生きる喜びとは自分にとって何なのか、どうすればそれを達成できるのか─。きっとその理由は、人間も犬や猫とさほど違わないのだろう。しかし、人間だけが異なる点が1つだけあるように思う。それは、「誰がそれらを教えるか」である。

 僕は動物学者ではないので本当のところは分からないが、犬や猫は本能的に生きる意味を知っており、他者が教えるとしても親だけではないかと思う。一方の人間はどうか。保育園に始まり、幼稚園、小学校、中学校、高校や専門学校、大学、そして大学院に至るまで、さまざまな大人が寄ってたかって教育を施す。

 それだけではない。新聞やテレビ、Webサイトなどのメディアが、実に多くの情報を人々に与え続けている。テレビ画面や雑誌を彩る華やかなスターやモデルの姿などを見て、自分がいかにも弱い人間のように感じてしまっている人も少なくないのではないか。

 こうした過剰教育が、人間を、不安に怯え、志を持たない動物にしているように僕にはみえる。