PR

 「ビッグデータに切り込む第3のコンピューター」

 とかけて、「FPGA」と解けた読者は、一体どれくらいいるでしょうか。私自身、このような分野にFPGAが浸透しつつあるとは、寡聞にして知りませんでした。今号の特集は、日経コンピュータから異動してきた進藤記者の労作です。本誌がしばらく距離を置いていた、ネットワークの先にある地殻変動を、システムを活用する側の視点で鋭く捉えてもらいました。これを皮切りに、本誌はクラウド側の技術進化にも改めて目を配っていく所存です。

 従来の常識からすると意外な用途が開けることは、珍しい話ではありません。青色LEDの発明でノーベル賞の栄冠に輝いた名古屋大学の天野浩教授は、LEDが照明に使われるとは全く思っていなかったそうです。同氏の目標だったのは壁掛けテレビや光ディスク。青色LEDよりも青色レーザーを狙っていたといいます。こうした用途はもちろん、ノーベル賞の授与理由の筆頭に挙がった白色光源をも実用に至らしめた原点は、机上の空論ではなく本当に光る素子の誕生です。自分の手に触れ、自分の目をくらませる現実の存在が、後進の創造性を刺激したわけです。

 天野氏の成果には、偶然も味方しました。低温バッファ層の作製は、電気炉の不調で、狙った高温を実現できなかったことが、きっかけになったそうです。p型GaNの作製では、たまたま開いた教科書の記述がヒントになりました。では、こうした出会いがなければ、快挙は成し遂げられなかったのか。天野氏の見方は少し違います。「いつも、そのことについて考えていたからこそ、偶然の出来事にも反応できた」(同氏)。

 同じ意見を、Liイオン2次電池の開発でCharles Stark Draper賞を受賞した西美緒氏からも聞きました。「人にウイルスのレセプターがないとインフルエンザにかからないのと同じで、世の中を飛び交う情報に対するレセプターを持っていないと、肝心なときにピンと来ない」(本誌、2014年3月31日号のインタビューから)。加えて西氏は、レセプターを増やすことが重要だといいます。同氏の業績には、以前携わった音響材料の開発から趣味の洋ラン栽培までが貢献しました。どのような問題でも、何が解決の糸口になるかは事前にはわかりません。「だからもうとにかく窓口を全開に広げることです」(同氏)。

 自らの課題を考え続けるのは研究者の役割です。我々にできるのは、幅広い情報提供を通じて、読者の視野の拡大に少しでも資することです。偶然を必然に変える触媒の役割を果たすことができれば望外の喜びです。